欧州

2024.08.03 09:00

ロシア軍、T-72戦車と対潜迫撃砲を合体させたフランケン車両生み出す

インド海軍のミサイル駆逐艦「マイソール」に搭載されているRBU-6000対潜迫撃砲。2007年4月、横須賀(viper-zero / Shutterstock.com)

インド海軍のミサイル駆逐艦「マイソール」に搭載されているRBU-6000対潜迫撃砲。2007年4月、横須賀(viper-zero / Shutterstock.com)

ウクライナ北東部ハルキウ市方面で防御線を保持しているウクライナ陸軍第3独立強襲旅団のドローン(無人機)操縦士は、8月1日かその少し前、珍しい目標を発見した。それは一見、ロシア軍のTOS-1多連装ロケットランチャーのようだった。TOS-1はT-72戦車の車体に、強力な燃料気化爆薬(サーモバリック)弾頭ロケット弾の発射機を搭載したものだ。

操縦士は自爆ドローンをこの車両に突っ込ませ、爆破した。ウクライナ側の観察者らが、この車両はTOS-1ではなく、もっと奇妙で珍しいものだったと気づいたのはそのあとのことだった。

それは、1970年代に開発されたT-72B戦車の車体に、これまた古いRBU-6000対潜迫撃砲を載せた新種のロケット弾発射車両だった。第3強襲旅団は「ロシアの牽引車両と海軍向けロケットランチャーのフランケンシュタイン」と表現している

ロシアがウクライナで拡大して2年5カ月あまりたつ戦争で、ロシア軍はこうした即席のハイブリッド車両、いわゆる「フランケン車両」を数多く生み出しており、RBU-6000とT-72Bの組み合わせはその最新の例になる。間に合わせのものでこしらえたこの車両はまた、ロシア軍の抱える問題が深刻化していることのさらなる証拠でもある。

ウクライナ側の報告で戦車以外の装甲戦闘車両を1万6000両あまり失ったとされるロシア軍は、新造や古い在庫の改修で十分な代替品を調達するのに苦労している。2022年2月の戦争拡大時点で、ロシア陸軍はTOS-1を50両ほど保有していたが、これまでにおよそ半数を失っている

ロシア側はTOS-1などの車両が不足しているために、長らく放置されていたT-72Bを引っ張り出し、それを改造して潜水艦攻撃用の大砲を取り付けたのだろう。T-72Bは戦争拡大前、ロシア国内の屋外保管施設に860両ほど置かれていたことが衛星画像で確認されている。ロシアが北朝鮮からミサイル車両を輸入しているらしいのも同じ理由からだろう。

RBU-6000は本来は潜水艦を撃沈するための兵器だが、地上戦用の兵器としても悪くはない。命中精度があまり高くないので精密打撃には不向きなものの、敵部隊の制圧には十分役立つと考えられる。
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翻訳・編集=江戸伸禎

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