アジア

2024.08.05 09:00

民間投資の回復を目指す中国、ただし民間企業の「声を聞かない」新たな策

NDRCはすでに、民間投資に適した約2900の投資プロジェクトを特定したと発表している。NDRCは各省とともに、これらのプロジェクトに投資しそうな民間企業を選別するために「事前受入検査」と呼ぶものを行う。当局者らは、こうした取り組みで約3兆2000億元(約66兆円)の投資を呼び込めると見込んでいる。

プロジェクトへの参加を促すため、NDRCは参加する民間企業にリソースの十分な供給や信用情報を保証し、インフラプロジェクトに関しては不動産投資信託(REIT)の開発を合理化する。また、承認や金融機関の融資にかかる時間を短縮するために、見込みのあるプロジェクトを関係する部署に案内する。金融機関は融資を行う前に「市場原理」に従ってプロジェクトの独立審査を行うというが、それが何を意味するのか、明確に示されていない。

不可解なことに、この計画では民間企業がどこに絶好のビジネスチャンスがあると考えているか、またどの分野が最も成長し、利益につながりそうかを当局に知らせる仕組みがない。計画では民間企業の懸念に耳を傾けるとうたっており、民間企業からフィードバックを受けるために定期的に調査を行うことを約束している。だが、民間企業に助言を求める規定はない。それどころか、計画では民間企業が自らの内部管理と監督について助言を受けるために地方の当局に相談するよう促している。

よく考えられているように聞こえるかもしれないが、この計画には根本的な欠陥がある。民間企業からの助言を一切否定するというのは、すなわち業界で最も深い見識を持つ企業の取り組みを断ち切るということだ。

当局が好ましいと思うプロジェクトを周到に進めようとしても、どのプロジェクトが最も有望か、最善の助言を受けられないことになる。計画が成功するかどうかは、当局と企業の目の付け所が幸運にも一致するという偶然にほぼ全面的に依存することになる。そして運任せというのはどのような経済にとっても悪いものだ。

forbes.com 原文

翻訳=溝口慈子

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