宇宙

2024.08.03 16:00

縮小する「木星の大赤斑」、小型の嵐の減少が原因か 最新研究で新説

NASAのジュノー探査機が2018年4月1日に撮影した木星の大赤斑(NASA/JPL-Caltech/SwRI/MSSS/Gerald Eichstädt/Seán Doran)

木星のどの画像を見ても、特徴的な「大赤斑」がまず目に飛び込んでくる。大赤斑は、木星の赤道近くで猛威を振るい続けている巨大な嵐だ。

大赤斑が写っていない木星の画像を見るのが珍しいほど、非常に象徴的な模様だ。実のところ木星は10時間弱で1回自転しているにもかかわらずだ。

だが、この大赤斑が縮小しつつあり、その原因を明らかにしたとする研究結果が発表された。

楕円形の渦構造

大赤斑は、地球がすっぽり入るくらいの大きさがある巨大な嵐で、木星の南半球に位置しており、少なくとも1831年から吹き荒れ続けている。赤橙色をした楕円形の渦構造で、幅が約1万6000km以上に及ぶ。時速約680kmの風が反時計回りに吹いていることから、低気圧ではなく高気圧と見られている。

NASAのハッブル宇宙望遠鏡が2017年4月3日、地球との最接近時に撮影した木星(NASA, ESA, and A. Simon (NASA Goddard))

NASAのハッブル宇宙望遠鏡が2017年4月3日、地球との最接近時に撮影した木星(NASA, ESA, and A. Simon (NASA Goddard))

大赤斑をめぐっては不明な点も多い。いつ形成されたか、なぜ形成されたのか、なぜ赤色をしているのかについても、明らかになっていない。わかっているのは過去100年間にわたり、特にこの50年の間に小さくなってきていることだ。

より小型の嵐

今回の最新研究では、大赤斑が縮小している原因を解明している。学術誌Icarusに掲載された論文によると、大赤斑と木星大気の3次元シミュレーションに、より小型の嵐との相互作用を組み込んで、一連の解析を実施した。その結果、小型の嵐の存在によって大赤斑が強まり、大きくなる一方、小型の嵐が存在しない場合は縮小することが示唆された。

論文の筆頭執筆者で、米エール大学文理大学院の博士課程学生のケイレブ・キーベニーは「木星で起こることが知られているように、より小型の嵐を大赤斑に『摂取』させることで、大赤斑のサイズを調節できることが、今回の数値シミュレーションを通じて明らかになった」と説明している。

地球の気象

今回の研究は、地球の異常気象の予測に対して示唆を与えている。地球の中緯度帯に流れる偏西風ジェット気流内で発生する高気圧系「ヒートドーム」の持続期間は、より小規模な高圧渦や高気圧との相互作用に関連している可能性があることが指摘されている。ヒートドームは高気圧が上空に停滞して熱気を閉じ込める現象で、熱波や干ばつなどの異常気象の大きな要因の1つとなっている。
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翻訳=河原稔

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