スタートアップ起業家の層が厚くなっている。INITIALの調査によると、創業まもないシード期にあるスタートアップの社数は2023年時点で7331社と、前年から約2500社増えた。起業家の母数が顕著に増えると同時に、その性質も多様化が進み、日本経済の未来を担う「希望の星」たちが各所で存在感を発揮している。
この1~2年で注目すべき動きのひとつが、スタートアップで成功を収めた経営者たちの次なる挑戦だ。例えば、東証グロース上場のニューラルグループでCTOを務めた佐々木雄一は、23年3月にAIスタートアップのSpiral.AIを設立し、同年10月にシードラウンドで10.6億円を調達。家族向け情報サイト「ママリ」などを売却した実績をもつ大湯俊介と島田達朗は、新たに立ち上げたVTuberプロジェクトを手がけるAnotherBallで同年11月に19億円を集めた。また、今年6月には、弁護士ドットコムで電子契約サービス「クラウドサイン」の事業責任者や取締役を務めた橘大地が、創業したばかりのHRスタートアップ、People Xで16億円の資金調達を発表した。
大学などでの研究成果の社会実装を目指すディープテックも存在感を示している。23年に始動した「スタートアップ育成5カ年計画」でも重点的に支援策が盛り込まれているディープテックは、SBIR(中小企業技術革新制度)をはじめ公共調達による資金が流入してきたことで、スタートアップにとって市場機会が広がっている。インキュベイトファンド代表パートナーの村田祐介は、「東京だけでなく、地方発のディープテック企業が数年前と比べて明らかに増えている実感がある」と話す。
23年の国内スタートアップ資金調達総額は7536億円。このうち研究開発型スタートアップは3283億円と全体の半数に迫る勢いだ(INITIAL調べ)。シード期でも、ここ1年ほどで非侵襲的大腸がんスクリーニングAIのBoston Medical Sciences(4億円 )や物流ロボティクスのRENATUS ROBOTICS(約3億円)、血管内治療機器開発のGlobal Vascular(2.5億円)など、億円単位の調達事例が目立つようになってきた。
Forbes JAPANが4月25日に開催した、創業3年以内のスタートアップ起業家・経営陣のためのイベント「RISING STAR Meet-up 2024」は、こうしたスタートアップ起業家の層の広がりを如実に映し出す結果となった。イベントの目玉であるピッチ大会には100社以上がエントリーしたが、このうちディープテック企業は約2割を占め、以前の数パーセントから大幅に増加。編集部による事前選考を経て計10社がピッチ登壇したが、ダイヤモンド半導体の実用化に挑む大熊ダイヤモンドデバイス、視触覚センサー搭載のロボットを開発するFingerVision、血管の細胞治療薬を研究開発するリバスキュラーバイオなど、グローバルでのビジネスを前提に事業に挑む起業家の姿は印象的だった。