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2024.08.20 11:00

シーメンス177年の歴史に学ぶ ダイバーシティ経営の極意

ドイツで創業して以来、170年以上の歴史を持ち、情報通信や電力関連、交通、医療など幅広い分野を手がけてきたシーメンス。ビジネス、そして組織の在り方を柔軟に変化させてきた同社に、ダイバーシティはどのように寄与したのか。

同じくドイツで設立され、多様なカルチャーが根付くローランド・ベルガー日本オフィス代表の大橋譲が、シーメンス社長の堀田邦彦に聞いた。



大橋譲(以下、大橋):ドイツをルーツとした企業同士、いろいろと共通点があるのではないかと思い、お話しできるのを楽しみにしていました。堀田さんはエンジニア出身なのですよね。

堀田邦彦:(以下、堀田):はい。ファーストキャリアはエンジニア職です。その後、アメリカに赴任するなどして、自動制御や三次元データ関連の技術に長年携わってきました。

2002年には、外資系PLMベンダーでエグゼクティブ・ディレクターに就任して、2008年から代表を務めていたLMS日本法人が買収されたのを機に2013年、シーメンスに入社しました。2020年からはシーメンス日本法人の代表を任され、現在に至ります。

シーメンス代表取締役社長兼CEO 堀田邦彦

シーメンス代表取締役社長兼CEO 堀田邦彦

大橋:私もエンジニア出身の経営者です。元はITエンジニアでしたが、より抜本的に日本の産業や社会を良くしたいと思うようになり、経営について学ぼうと、経営コンサルティングの業界に飛び込びました。堀田さんは、どのような経緯で経営の道へ進まれたのでしょうか。

堀田:もともと、経営には興味がありました。あるとき、コンサルタントにキャリアパスを相談したところ、「興味があるなら、経営の基礎を学んだほうがいい」とアドバイスされ、MBAのプログラムを受講したのです。そして、外資系企業に転身後、経営側に軸足を移していきました。

大橋:経営を学ぼうとしていた部分でも似ていますね。続いて、創業や日本法人の沿革などシーメンスについて、あらためて教えていただけますか。

堀田:1847年に、技術者のヴェルナー・フォン・シーメンスがドイツで創業した会社です。シーメンス製の電信機が日本に初めて持ち込まれたのは幕末のこと。その後、日本で電気が使われるようになった明治時代には、東京地区でシーメンス製の発電機が最初に導入されるなど、130年以上にわたって社会インフラを支えてきました。

IT技術が社会インフラとして整備された現代では、DXの需要が高まっています。そこで現在は、産業界を中心に日本のDX実現を支援するために、例えば、サイバー空間に現実の環境を再現する「デジタルツイン」などのソリューションを提供しています。

大橋:DXの需要が高まる一方、日本企業のDX推進は、海外と比べて遅れているようにも感じます。堀田さんは、どのような課題があるとお考えですか?

堀田:日本企業のDXが遅れているのは、「おもてなしの心」に起因する、相手に尽くす性質が関係しているのではないでしょうか。

例えば、システム開発を行う場合、「利便性を追求したい」というクライアントの要求に必死に応えようと、ITシステムの改修を繰り返して、複雑にしてしまうことがあります。いわば、増改築を繰り返した“古い旅館”のようなレガシーシステムができあがってしまう。そのような複雑化した既存システムは新しい技術に対応できず、不具合が生じることもあるのです。

ただ、このような古い体質の企業がある一方、世界最先端で進んでいる企業もあります。両極にある企業が共存するのが、日本のDXの現状です。

目的なきDXは、企業を変革できない

大橋:古い体質の企業で経営側がDXを推進しようとしても、現場サイドの抵抗にあうこともありますよね。

堀田:そうですね。現場がDXの重要性を理解して受け入れないと、最新のツールを導入しても浸透しないでしょう。

現場に受け入れてもらうには、DX導入が現場にとってもメリットになることを納得させることが肝心です。そのために、「現場よし、経営者よし、お客様よし」と、すべての立場の人が満足できる「三方よし」になるような施策を、一歩ずつ慎重に展開しなければいけません。

とはいえ、それには綿密な準備が必要で、現場にDX推進の価値が浸透するまで時間がかかるはずです。ただ、最初は遅く感じるものの、だんだんと加速していくでしょう。日本は今まさに、DX推進の価値が現場に浸透している時期なのです。

大橋:お客様から、よくDX推進についてご相談いただくのですが、私は「DXの導入」という言葉があまり好きではありません。というのも、あくまで手段であるDXが目的化していることが多いからです。

実はITソリューションを導入したお客様自身も、旧来のシステムの置き換えをしただけで、ビジネス的な成果に結びつく形で良く検討され尽くしていない状態で進めてしまうケースが多々あります。結果、「DXを導入したけれど、何の成果も出ないのはなぜですか」というご相談が少なくありません。

そうならないように、自分たちなりの目的をもってDXを推進することが重要であり、私たちがそのお手伝いをすることもあります。

 ローランド・ベルガー日本代表 大橋譲

ローランド・ベルガー日本代表 大橋譲

堀田:目的を見据えてDXを進めることこそが、まさに真髄ですね。当社では戦略的プライオリティが明確に定義されており、そのなかには「お客様にとって価値あるものを提供する」という言葉があります。

DXの目的は導入することではなく、お客様企業が消費者の方により良い製品を提供できるようにすることであり、あくまでもDXはそのための手段の一つであると。そうした視点を、経営者も現場も持たなければいけないと、あらためて感じました。

「べき論」を解放し、フィーリンググッドな組織を目指す


大橋:シーメンスは、時代の流れや市場のニーズに対応し、柔軟かつ抜本的に業態を変革されてきました。なぜ、環境変化や新たな課題に素早く対応できるのか。その理由を教えていただけますか。

堀田:多様なメンバーが集まっているからでしょう。私たちはそれぞれの国に合わせた多様性を重視しており、経営者やマネージャーも国籍豊かですし、ローカルスタッフのリーダーシップも尊重しています。

そうした多様なメンバーがチームビルディング研修などを活用し、ボトムアップ型でメンバーの個性と能力を生かせるチームづくりを行い、目標達成に取り組んでいます。

大橋:組織力を強化し、状況の変化に対応して素早く組織を変革していくには、チームビルディングも必要ですよね。私たちのコンサルティングでも、重要な要素の一つとして捉えています。

例えば、お客様企業の次世代リーダーを育成する際、私たちはコア人材のトレーニングをするのではなく、コア人材と一緒に次世代の経営について考えたり、新規事業の柱をつくる議論を行ったりします。

そこで出てきた案を役員会議にかけ、承認されれば実行していくのです。すると、コア人材は経営が他人ごとから自分ごとへと切り替わり、組織を牽引しようというスタンスに変わっていきます。

大橋:ちなみに、チームのなかには「自分の意見を持ちたくない」「自分は変わりたくない」という人もいますよね。そうした方々を多様性として受け入れたほうがいいのか。堀田さんはどうお考えですか。

堀田:当社のパーパスは「先端の技術力で、人々の毎日をより豊かに変革すること」です。組織のメンバーがそれに共感し、一丸となってテクノロジーを提供することで、社会や人々の生活に貢献しつつ利益を生み出すことが大切です。そうなると、メンバーは自分のあるべき姿がおのずと見えてきます。

大橋:あるべき姿の自覚を促すために、社内で伝えていることはありますか。

堀田:売上目標の達成ですね。全社会議は数字の報告から始まり、いくら足りないのかを繰り返し伝えています。

ただ、「もっと売上を伸ばすように」と押し付けるのではなく、各事業部のリーダーに製品や部門ごとの売上データのサマリーを透明性高く見せるだけです。すると、ほかの事業部の結果が刺激となって自分の頭で考えるようになり、結果的に業績が伸びます。

大橋:細かく指示するよりも考えさせるリーダーのほうが、メンバーは主体性を発揮しやすくなるのでしょうね。

堀田:また、多様な意見を生かすという意味では、当社では、半年に1回、世界中の全社員30万人を対象に調査を実施しています。いわゆる、エンゲージメントサーベイですね。

私は、日本法人の社員が回答したフィードバックやコメントをすべて読み、社員がどんなことを評価し、何に不満をもっているかを確認します。そして、マネージャーたちと必要な取り組みを議論し、そこからプロジェクトにするといった一連の流れをコンスタントに行っています。

大橋:サーベイを実施すると、会社や仕事に対するメンバーの多様な考えや価値観が可視化されますよね。私が理想とするのは、性別や国籍など人材の属性が異なるだけではなく、多様な考え方が共存する組織です。

社会人になると、「こういう考え方をすべきである」と固執する方は多いと思うのですが、そうした「べき論」から考え方を解放したいのです。そして、多様な考え方をぶつけ合いながら、その時々にベストな結論を選択し、柔軟に変わっていける組織を目指しています。

堀田:当社が変わり続けられるのも、「べき論」に固執していないからでしょう。私が代表に就任した際、「創業者の言葉に固執してはいけない。目指すべき方向性は、その時代のリーダーが決めなさい」と本社から教わりました。

時代が移り変わるなか、普遍的な価値をもつ言葉はなく、「創業者の言葉をひたすら守るべき」とすれば、会社の成長が止まってしまいます。この教えからもわかるように、シーメンスは、多様な考えの連続で177年間続いてきた会社だといえるでしょう。

現在、日本法人のリーダーを担う私が目指したいのは、フィーリンググッドであること。つまり、働いていてワクワクする会社です。多様な人材が能力を発揮できるようにするには、さまざまな意見を受け入れることが大切であり、メンバー同士がお互いの成果を認め合い、褒め合う文化を醸成したいですね。

大橋:おっしゃるとおり、さまざまなメンバーが多様なアイデアを出し合っていける環境をつくらないといけませんね。組織についての考え方なども重なる部分も多く、学びの多い時間をありがとうございました。

対談を終えて 大橋 譲

今回の対談を通して、堀田さんのリーダーとして“べき論固執しない”考え方は、柔軟性を持ち変化を恐れない経営者として、私自身も背中を押されるような気持ちになるものであった。

1. ビジネスや組織の変革は経営側が押し付けるのではなく、それぞれに考えさせる

2. 多様な社員が連携し合い、ボトムアップで提案ができるチームが、環境変化や課題に強い組織を生む

3. 組織のビジョンを促進するリーダーが求められている。同じパーパスに向かって進める人材を選ぶことが重要

4. 多様な価値観や考え方をお互いが認め、意見を交わし合う“文化”を持つことが、これからの働き甲斐ある企業、成長し続けられる企業には欠かせない

変化の多い時代、旧来の考え方だけでは未来を見通すことが難しい時代にあって、改めて多様性ある社員一人ひとりやチームが考え抜き、連携する。そこから自ずと課題解決や未来に向けた施策が生まれる習慣が組織の“文化”に落とし込まれていること。それが、これからの企業のあるべき姿なのかもしれない。それを真のダイバーシティと呼ぶに違いない。

promoted by ローランド・ベルガー/text by 流石香織 / photograph by 小野奈那子 / edited by 杉山大祐(ノオト)

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