「手を動かし、顧客とビジネスを共創する」というビジョンを掲げるrenue。企業の新規事業推進、共創におけるコンサルフィーはレベニューシェアや顧客利益からの報酬計算による契約形態を貫く、それはコンサルファームが少なくないリスクを負うことと同義だ。その理由について山本は「お客様のビジネス成功に責任を持ってコミットするため」だと語る。
「コンサルティング業界の一般的な契約形態は、コンサルタント一人あたりの月額費用が設定され、成果に関わらず報酬が支払われます。月額費用が固定された契約では、コンサル側の目的が顧客のビジネス成功よりも長期契約を続けることになりかねない側面があると考えています」
自身もコンサルティング業界出身である山本は、こうした既存のビジネスモデルに疑問を感じていた。だからこそ、レベニューシェア・成果報酬型を採用。成果がなければ報酬もない契約とすることで、徹底して顧客の成功へコミットしようとしているのだ。
成功のために社内政治にも踏み込む
「DXを実現するにはお客様自身も変わる必要がある」山本のその言葉の通り、renueは変革のために必要であれば、顧客の組織にまで踏み込んでアドバイスを行う。経営会議の意思決定の仕組みに課題があるなら、会議に同席して課題を指摘。「痛いところを突く」役割こそ、外部であるコンサルの役目であると山本は考えている。例えばこんな話がある。
「ある老舗企業の経営者の方から、営業活動のDXを支援してほしいという依頼をいただきました。プロジェクトを推進していくなかで感じたのは、経営者の思いと現場の意見の相違。両者の理解が一致しない限りDXは進みません。社内の関係者がこうした事態を収集する場合は通常、上司に仁義を通してから担当部署に理解を取り付ける面談を組むなど、方々との調整が必要になります。ただ、今後もその会社で働き続けることを考えると、反発を買うような思いきった行動は取りにくい。
そこで必要なのが、我々のような第三者であるコンサルです。このケースではrenueが本プロジェクトに関わる方々の調整役として動ける権限を社長と直接交渉し、許可をいただいたうえでプロジェクトを進めていきました」
こうした姿勢は受け入れられにくいケースもあるという。それだけ、DXは社内政治にも深く関わる取り組みだということだ。しかし山本の思いは揺るがない。「真の改革は痛みを伴うものである」という信念のもと、真摯に顧客のビジネス成功に向き合っている。
企業の規模や業種を問わない3つの理由
新規事業立ち上げのほか、DX推進支援、事業会社の内部にコンサルティングサービス部門を構築し、新しい収益源を目指す「コンサルティングの内製化」など、renueが手がける支援は多岐にわたる。また、renueは業種・企業規模にもこだわらない。そこにはいくつかの理由がある。ひとつは「今、役立つIT」をすみずみまで行き届かせる世界を目指していることだ。
「日本の大半を占めるのは中小企業であり、大手コンサルファームへの依頼が難しいことも多い。中小企業にDXを届けることができれば、新しい価値やサービスの創出につながります」。
最近は生成AIの活用などのプロジェクトを手がけることも増えており、こうした場合には生成AIに強みをもつ企業とアライアンスを組んで、最先端で実用的な技術を導入させている。
2つめの理由は、変革する意志をもち、リスクを取る気概と意欲がある顧客と出会うため。こうした顧客は企業規模・業種とは関わりなく存在している。同じ考えを共有できる顧客に対してこそ、renueはより価値を発揮できる。
また、自社のコンサルタントが早期に成長できる環境構築も背景にある。
「大手コンサルファームは、ひとつのプロジェクトにピラミッド構造のチームで多くの人を投入することが多い。これでは若手はオーナーシップをもって仕事をしにくく、成長に時間がかかります。renueでは若手が早期にお客様のビジネス成功を実現した体験を積めるよう、案件が例え小規模だとしても積極的に支援をしています」
採用においては、顧客にコミットする意識をもっているかを重視。採用後の教育にも力を入れている。山本が徹底しているのは、顧客の組織全体を俯瞰したうえでプロジェクトの位置づけを捉えること。成果を出すためにどんなアクションが必要かを理解させ、実践できるよう教育しているという。
レベニューシェアをアジアに定着させたい
renueが目指すのは、成果報酬型という現在のビジネスを成長させ、アジアにこのモデルを広めていくことだという。山本は、業界の歴史や構造への分析とともに展望を語る。「既存のコンサルティングファームは、企業の会計顧問などを請け負っていた欧米の商習慣を基にしています。そのため、先払いが通例で、コンサル側のリスクがない契約形態になっている。
我々の成果報酬型のシステムは、顧客が求める真の改革や、社会実装できる新規事業を実現しなければ、報酬を得ることはできません。ですが、だからこそ、一緒に痛みを伴う覚悟でプロジェクトに全力を注ぐことができる。今後はこのビジネスモデルを日本に定着させ、ゆくゆくはアジア全土でも、変革する意志をもってリスクを取る気概と意欲がある顧客と出会い、共に成長していきたい」
成果報酬型のビジネスは決して収益性が高いとは言えないが、先払いの既存システムでは顧客に着実なメリットが約束されないと山本は考えている。既存のコンサルファームIT領域で凌ぎを削るなかで、最先端のデジタルソリューションをもレベニューシェアで挑むrenueは、市場に風穴をあけることができるのか。山本の言葉には力が入る。
「顧客が私たちに支払った対価は、ビジネスの変革を成し遂げることで顧客の利益として還元されるべきです。そして日本企業が外貨を稼げる強い企業になるよう、より多くの企業を支援していける存在になりたいと思っています」
renue
https://renue.co.jp/
やまもと・ゆうすけ◎2008年京都大学工学部に入学。10年に同大学を中退し、東京大学文学部ドイツ文学科に入学。卒業後はアクセンチュアにて金融・ITのコンサルティング業務に従事したのち、ジラフにてプロダクトオーナーやCMOを兼任。その後フリーランスを経て21年3月renue設立。