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2024.08.01 09:30

ロシア軍に北朝鮮製の対戦車ミサイル車両が出現か 兵器供与拡大の可能性

Shutterstock.com

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ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は6月中旬、平壌を訪れて北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)総書記と会談し、有事の軍事援助などを定めた新たな条約に署名した。

6週間後、ウクライナ北東部の戦線のロシア側に、北朝鮮製のミサイル発射車両とみられる車両が出現した。

ロ朝の軍事関係の強化による影響が戦場に表れ始めた可能性がある。実際に北朝鮮がロシアに装甲車両を供与しているのであれば、ロシアがウクライナで拡大して2年5カ月たつ戦争で、ロシアにとって戦場で最大の問題のひとつになっている戦闘車両不足の軽減に寄与するかもしれない。

7月30日かその少し前、ウクライナ軍のドローン(無人機)は、ロシア軍が5月にウクライナ北東部ハルキウ州で始めた攻勢で主戦場になっている都市、ボウチャンシクに近いロシア南部で、奇妙な車両を見つけた。精査すると、プルセ(火の鳥)-4対戦車ミサイルの6輪の発射車両(米韓のコードネーム・M-2018)のようだった(編集注:ウクライナメディアによると、ウクライナ軍のハルキウ作戦戦術集団の報道官は画像の車両がM-2018だとは現時点で確認できないとしている。一方、韓国の市民団体「自主国防ネットワーク」の事務局長で軍事専門家の李逸雨[イ・イルウ]はラジオ・フリー・アジアに、車両は北朝鮮製のM-2010装輪装甲車との見方を示している。後述のようにM-2018はM-2010の6輪駆動仕様の車体にミサイル8発の発射機などを載せた構成になっている)。

ウクライナ軍のドローン操縦士、Kriegsforscher(クリークスフォルシャー)は、この車両は「ロケット弾を6発発射して撤収した」と報告している

プルセ-4の自走式対戦車ミサイルシステムは北朝鮮が独自に開発したものだ。旧ソ連のBTR-80装甲兵員輸送車の北朝鮮版の車体に、対戦車誘導ミサイルを発射する嵩高の砲塔が載せられている。ミサイルコンテナは8個あり、各ミサイルは重量数十kg、射程は数kmとみられる。

このシステムはウクライナ軍とロシア軍の下車戦闘する対戦車ミサイルチームと同じく、敵戦車の撃破という任務を担う。自走式なので当然、速度や機動性、防護は下車チームを上回る。

プルセ-4/M-2018は、ロシア軍で高まっているニーズを満たすものになるだろう。ロシア軍は2022年2月の戦争拡大時点でシュトゥルム-Sやコルネット-Tなどの自走式対戦車ミサイルシステムをおそらく数百両保有していたが、ウクライナ軍との戦闘ですぐに50両近くを失った。これらの車両が最近前線であまり見かけなくなったのは、たんに残っている数が少ないからかもしれない。
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翻訳・編集=江戸伸禎

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