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2024.07.31 18:00

中国の格安アプリ「Temu」の出品者が抗議集会、株価は急落

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中国のEコマースアプリTemu(テム)を通じて中国製品を販売する数百人の出品者が7月29日、アプリの運営元であるPDDホールディングスの広東省にある拠点で抗議集会を開き、同社が科すペナルティが不当だと訴えた。

これを受け、米ナスダックに上場しているPDDの株価は米国時間30日の取引で3.5%下落し、同社の創業者で中国で2番目に裕福な人物であるコリン・ファンの保有資産は、1日で16億ドル(約2440億円)も減少した。現在44歳のファンは、2021年3月にPDDの会長職を辞任したが、依然として同社の株式から富を得ている。フォーブスは彼の保有資産を434億ドル(約6兆5497億円)と推定している。

「投資家は、中国当局がTemuの出品者に対する扱いを調査することを懸念している」と、調査企業ブルーロータス・キャピタルのロバート・マッケイは述べている。中国のSNSに投稿された動画によると、PDDのオフィス前には29日に数百人の出品者が集まり、待遇改善を要求したという。

彼らは、Temuが支払いを保留したり、品質やアフターサービスの問題に対して詳細な説明なしにペナルティを科すことが多いと主張している。マッケイによれば、罰金の額は商品の価値の5倍にも達する場合があるという。「他のプラットフォームでこのような問題を聞いたことはない。出品者の一部はアリババのEコマースサイト、アリエクスプレスへの移行を検討している」と彼は述べている。

テムの広報担当者は、加盟店のグループが最近、広東省広州にある物流拠点で集会を開いたことを報告したうえで、同社は加盟店グループの不満を解消するための解決策を彼らと協議しているとした。

広報担当者はEメールで、「彼らは、製品の品質やコンプライアンスに関連して発生したアフターセールスでのTemuの対処法に不満を持っており、数百万元に及ぶ金額について争っている。これらの事業者は、売上契約に記載された通常の仲裁や法的手段で問題を解決することを拒否している」とコメントした。

2015年に元グーグルのエンジニアのファンが設立した同社は、2022年に格安EコマースのTemuを立ち上げ、グローバル展開を開始した。Temuは、積極的なディスカウントや派手なマーケティング戦略で海外の消費者を引きつけており、米国では今年のスーパーボウルのCMで「億万長者のように買い物しよう」といったスローガンを掲げていた。

このアプリは、欧州や東南アジアでも拡大しており、PDDの急速な成長の原動力となっている。PDDの2024年度第1四半期の売上高は、前年同期比約2倍の868億元(約1兆8000億円)に上昇し、純利益は3倍以上の280億元(約5850億円)に急増していた。

昨年末に同社の時価総額は、一時的にアリババを上回り、中国で最も価値のあるEコマース会社となった。PDDの驚異的な成長は、アリババの共同創設者のジャック・マーが社員に宛てたメモを書くきっかけとなった。現在の保有資産が249億ドル(約3兆7570億円)で、中国で6番目に裕福な人物であるマーは当時、「私は、アリババが変化を遂げ、より良い会社になることを信じている」と書いていた。

forbes.com 原文

編集=上田裕資

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