2024.07.31 09:30

訪問者数制限、二重価格制、行動促す特典 オーバーツーリズム対策の現在地

Lewis Tse / Shutterstock.com

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オーバーツーリズム(観光公害)がますます大きな問題になるなか、各国の観光地はどうすればそれを最も効果的に抑えられるのか頭をひねっている。訪問者数に上限を設けるのがよいのか、それとも外国人観光客には値上げする二重価格制を採り入れるのがよいのか。あるいは、訪れる人に「報酬」を通じて行動の改善を促すといった、また別の解決策もあるのか。

観光客のマナーの悪さで高まる訪問者数制限論

イタリアのフィレンツェは、多すぎる観光客に悩まされている都市のひとつだ。2023年の6〜9月にはおよそ150万人が訪れた。人口38万2000人の都市にとってこれほどの数の観光客を受け入れること自体大きな負担だが、さらに観光客のマナーが悪いと住民から訪問者数の制限を求める声が上がるのも無理はない。
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最近も、フィレンツェを訪れた女性観光客がローマ神話のぶどう酒と豊穣の神「バッカス」の像にみだらな行為をする写真がソーシャルメディアに出回り、「街がディズニーランドのようになっている」「女性を逮捕すべきだった」といった非難がわき起こった。

日本では、2013年に世界遺産にも登録された富士山の1日の入山者数に上限が設けられた。混雑や来訪者の問題行動を抑制するためだ。当局によると十分な準備をせずサンダル履きなど軽装で来る人が多いほか、たき火や山腹などの大量のごみも問題になっている。

日本でも検討される二重価格制

観光客数を抑えるためにブータンは2022年、「持続可能な開発料(SDF)」、いわゆる観光税を1日200ドル(約3万1000円)と以前の65ドルから大幅に引き上げた(編集注:SDFは昨年、2027年8月までの時限措置として1日100ドルに引き下げられている)。一方で、4日滞在すれば4日間、7日滞在すれば7日間、12日滞在すれば18日間SDFを無料とし、より長期間の滞在を促すインセンティブも設けている。

一方、観光客に地元民よりも高い価格を設定する二重価格制という解決策も提案されている。1993年に世界遺産に登録され、年間100万人以上が訪れる姫路城でも導入が検討されている。
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姫路市の清元秀泰市長は、現在18歳以上一律1000円の入城料について、外国人観光客を対象に4倍程度に引き上げることを提案している。東京の多くの飲食店も同様に、外国人観光客を対象により高い金額を設けることを模索している。
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翻訳・編集=江戸伸禎

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