グランドオープンに先駆け、5月から9月にかけて、麻布台ヒルズギャラリーと展覧会「カルダー そよぐ、感じる、日本」を共催。7月には、建築家・藤本壮介が内装を手がけた真新しい空間で、20世紀美術と現代美術の作品約45点を紹介する特別プレビュー展を開催した。また、7月上旬に開催されたアートフェア「Tokyo Gendai」では、ロバート・ロンゴの作品を多くの日本人コレクターに販売するなど、着実に根を張りつつある。
9月6日からは、こけら落としとしてロサンゼルスを拠点に活動するメイシャ・モハメディの新作絵画展「yesterday I was a tiny tube of toothpaste」を開催する。同アーティストにとってアジア初の個展だ。
「アーティストなしには存在し得ない」というギャラリーのビジネスとはいかなるものなのか。世界で350人もの従業員を要するペースの経営について、グリムシャーCEOに聞いた。
──長年構想されてきたという東京スペースがいよいよオープンします。話題スポット「麻布台ヒルズ」に、3フロア510平米という広い空間をどのように使われていく予定ですか。
日本との関係は長く、ギャラリー設立者である父(アーニー・グリムシャー)が最初に来日したのは1967年。以降、特に80年代後半から90年代にかけては私も共に、年に2回は訪れていました。日本の文化や歴史は、私たち家族のアートの認識において、必要不可欠な要素となっています。また、グローバルで見ても、見本では意味深い立ち位置にいます。
麻布台ヒルズを手がける森家は、日本の現代アートシーンにおけるリーダー的な存在であり、私たちは世代にわたる交流があります。かつて、森ビル創業者である森稔さんから直接、東京の開発構想を聞けたのは光栄なことでした。およそ2年半前に麻布台ヒルズのオファーを受け、東京の変革を担う再開発において、アートの国際的なプレイヤーが入る必要性を感じ、進出を決めました。
この東京で目指すのは、世界と日本の架け橋となること。短期的には富裕層やコレクターといった顧客とビジネス的なつながりを、長期的には日本のアーティストやカルチャーとつながりを深めていきたいと考えています。