同じ軍事ジャーナリストは、議員らの「終わりなき愚行はいつ終わるのだろうか」と嘆き、下院国防委員会のメンバーはスマートフォンなしで部隊を指揮してみれば、それがどれほど難しいかわかるはずだとの考えを示している。
政権の意図
ロシア軍の軍人たちは2年以上前から前線でスマートフォンを使用していて、それは彼らにとって非常に重要なものでもある。では、なぜいまになってロシアはそれを禁止しようとしているのか。ひとつの可能性は、ロシア下院が軍人の安全よりも自らの政治的立場を懸念しているというものだ。前線の軍人との直接のやり取りは、ウクライナで本当に起こっていることをロシア国内の人々が国営メディアの偏向報道なしに知る手段になるので、政権側にとっては危険なものだ。
WarTranslatedによるとロシアのある軍事教官は、新法案の裏には「軍人による(軍の)信用を落とす動画や訴えが続出するのを明確な意図をもって抑え込もうとする冷徹な計算が見てとれる」とし、「(軍内の)忌々しい行為を根絶するのは難儀な仕事であり(中略)、ガジェット所有者の魔女狩りをやるほうがずっと簡単だからだ」と続けている。
ロシアにとっての問題は、ウクライナにいる軍人からスマートフォンを通じておびただしい人的損失や装備の不具合、不衛生な環境などの窮状を訴える声が届くばかりか、確実に死ぬ場に向かわせるのをやめてほしいとプーチンに直接嘆願する動画まで送られてくることだ。
こうしたメッセージや動画の投稿が今後も続くと、「特別軍事作戦」が計画どおり進んでいるという国民の信念を揺らがせたり、指導部は状況を把握しているのかと国民に疑問を抱かせたりする可能性がある。
スマートフォンの使用を禁止すれば戦闘の効率性が損なわれ、引き続き使用を認めれば今後もプロパガンダにダメージになる訴えが出てくるのは避けられない。ロシアはそのどちらかを選ぶことになるが、実際によりありそうなのは、戦闘に関連したスマートフォン使用は禁じられるが、禁止が徹底的には実施されず、ロシアの政権にとって都合の悪い動画がネット上に流出し続けるという状況だろう。
(forbes.com 原文)