また、ゲーム業界は収益を利益に変えるのに四苦八苦している。これまで声優やモーションキャプチャー俳優を大量に起用してきたプレミアAAA(トリプルエー)タイトルの事業経済性は変わってしまった。
いまや、数年にわたる開発サイクルとハリウッド映画級の予算を必要とするこうしたゲームの制作は、販売が振るわなかった場合のリスクが非常に高い「賭け」と化している。「ハリー・ポッター」シリーズの世界を舞台とした『ホグワーツ・レガシー』で昨年大成功を収めたWBゲームズが、今年発売した『スーサイド・スクワッド キル・ザ・ジャスティス・リーグ』で大コケしたのはその一例だ。
業界収益の大半を占めるモバイルゲーム分野では、声優の起用は概してはるかに少ないが、重課金プレーヤーに依存しがちな無料ゲームや、タイトルの乱立で収益化に限界が見えてきた広告モデルなど、最も人気の高い事業モデルでさえ苦戦しているのが実情である。
AIを用いた音声複製の注目すべき事例としては、米NBCがパリ五輪の競技ハイライト配信に、名物実況キャスターの声を生成AIで再現したナレーションを採用している。この契約について本人は、複製された音声を聞いて「恐ろしさと驚きを同時に味わった」と告白しつつ、「AIはすでにある。こちらの準備ができていようがいまいが、もう存在している。抵抗することもできるし、受け入れることもできる。私は後者を選んだ」と述べている。
また、「スター・ウォーズ」シリーズでダース・ベイダーの声を長く担当してきた俳優ジェームズ・アール・ジョーンズは、90代を迎えて引退を決意。2年前、AI搭載の音声合成ソフト「Respeecher」を用いて別の俳優が読んだセリフを自分の声に変換し、今後のシリーズ関連作品に使用することを許諾する同意書をディズニーと締結した。
(forbes.com 原文)