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2024.07.29 10:30

歩みが遅い「産業の脱炭素化」はスタートアップのチャンスの場になる

Shutterstock.com

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産業の脱炭素化は、気候変動対策の中でも特に重要かつ困難な課題だ。産業部門は世界の温室効果ガス排出量の約三分の一を占め、多くのプロセスが長年にわたって確立されてきたものであるため、現状、変更が難しい。しかし政策や資本、そして顧客の低炭素ソリューションへの需要の高まりにより、スタートアップには既存の枠を超えて革新するチャンスが生まれている。
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本記事では、産業の脱炭素化の重要性、主な障害と推進力、そして注目すべきスタートアップについて解説する。

重要だが低い、産業の脱炭素化への注目度

産業部門は世界全体の温室効果ガス(GHG)排出量の大部分を占めている。電力やモビリティセクターが脱炭素化を進めれば、その割合はさらに増加することになる。

IPCC(気候変動に関する政府間パネル)の報告によると、産業部門は2019年に20GtのGHGを排出し、全排出量の33%を占めたという。主要な排出源は金属、化学、廃棄物、セメントなどの分野で、これらは世界の人口と経済の成長にともない、需要が増加すると予想されている。

日本においても、この状況は変わらない。産業部門は2021年のGHG排出量の27%を占め、熱と電力の供給を含めるとその割合は38%に上る。日本は2050年までにネットゼロを目指しており、その達成には産業部門の脱炭素化が不可欠だ。
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産業の脱炭素化は重要な取り組みでありながら、ベンチャーキャピタルの注目度も、資金投入も小さい。PwCのレポートによれば、産業の脱炭素化に特化したスタートアップは2013年から2022年の第3四半期にかけて、クライメートテック領域全体の資金調達の8%しか受けていない。

一方、モビリティセクターは資金調達の半分を占めている。産業部門へのVC資金の割合は2022年の第4四半期以降14%に増加したが、これはモビリティセクターの45%やエネルギーセクターの29%と比べて依然として低い水準だ。長期にわたるプロジェクトの開発サイクルや高額な設備投資、そして複雑な商業モデルが求められるため、産業の脱炭素化は解決が難しくリスクがともなう問題であるという認識を示している。

産業の脱炭素化がぶつかる3つの壁

繰り返しになるが、産業の脱炭素化は容易なことではなく、技術的、経済的な壁にぶつかっている。主な課題は以下のとおりだ。

・エネルギー排出とプロセス排出

重工業は、化石燃料の変換から生じるプロセス排出が多い。例えば、コークスを使った鉄鉱石の還元や、クリンカー製造のための石灰石の焼成、天然ガスから合成ガスを製造するプロセスなどがある。さらに、化石燃料は化学原料としての使用に加えてプロセス熱の燃料としても使用されている。そのため、エネルギー効率の改善だけでは完全な脱炭素化は達成できない状況にある。

・大規模な複雑なアセット

多くの産業で耐用年数が長く、設備投資が大きい大規模なアセットを保有している。そのため、アセットオペレーターは既存の資産やオペレーションの変更に対して消極的であり、また、残存寿命がある資産を廃棄することを避けるものだ。つまり既存のアセットをなるべく長く維持しようとする。
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文=マイケル松村 編集=安井克至

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