一方、そこからわずか30kmほど南では、ロシア軍は前進できていないばかりか、そうしようとして大量の死傷者を出している。
24日かその少し前、ロシア軍第150自動車化狙撃師団の所属とみられる大規模な部隊が、ウクライナ側の防御拠点の集落クラヒウカに対して複数の方向から攻撃を仕掛けた。
ウクライナ軍第79独立空中強襲旅団の報告によれば、この方面で「過去最大級」の攻撃だった。ロシア軍部隊は戦車11両、歩兵戦闘車45両、珍しいBMPT戦車支援戦闘車1両、オートバイ12台に搭乗する総勢数百人の兵士で構成されていた。
ロシア軍部隊は明け方に突撃を開始し、数時間以内に完全撤退を余儀なくされた。あとには大破した戦車6両と歩兵戦闘車両7両、焼けたオートバイ全12台が残されていた。第79旅団によるとロシア兵40人が死亡し、37人が負傷した。
「空挺部隊に栄光あれ!」と第79旅団はソーシャルメディアでたたえている。
One of the most massive assaults by the russian occupiers: they used 57 units of armored equipment, 12 motorcycles, and 200 assault troops. pic.twitter.com/ea72rCvbZS
— Defense of Ukraine (@DefenceU) July 25, 2024
ウクライナ側が攻撃をどのように撃退したのかも明らかにされている。まず、空からロシア軍の攻撃部隊を発見した。「われわれの砲兵部隊はただちに砲撃を始めました」と第79旅団は説明している。
砲弾が撃ち込まれるなか、ウクライナ側は爆弾を積んだドローン(無人機)を発進させ、対戦車ミサイル部隊(血に飢えていることで有名)も展開させた。そして、ロシア側の車両が地雷原に突入してくるのを待った。
「最初に何両かの戦車と装甲車両が被弾すると、残りの車両は戦場から急いで逃げ始めました」と第79旅団は報告している。ウクライナ側はドローンをさらに投入し、散らばった歩兵を仕留めた。「ロシア軍は甚大な人的損失を被りました」(第79旅団)。
ただ、今回の攻撃撃退についての第79旅団による説明では、ひとつ語られていないことがある。それは、この勝利を可能にした揺るぎない統率だ。アウジーウカの西の一部方面でウクライナ側の防御が崩れたのは、指揮統制がきちんと機能せず、大隊が自力で対応せざるを得なくなったためだった。
クラヒウカの東でウクライナ側の防御が保たれたのは、第79旅団司令部隷下の各部隊が単独で戦わなかったからだ。ドローン部隊、砲兵部隊、ミサイル部隊、地雷を敷設する工兵部隊など、各部隊が連携・協力して戦ったのだ。
ウクライナの著名な戦場記者であるユーリー・ブトゥソウは、ウクライナには経験豊かな将校が予備としてかなりの数いるのに、有能な指揮官に欠ける旅団があることを問題視している。
「陸軍司令部は、2022〜23年の激戦で名声を得た経験豊富な指揮官を予備として何十人も抱えているのに、なぜ経験の浅い旅団指揮官や能力の不十分な旅団幕僚が引き続き指揮しているのだろうか。これはどう説明できるのか」とブトゥソウは疑問を呈し、是正する必要性があると訴えている。
(forbes.com 原文)