最後の勝負として挑んだ「睡眠市場」で、マットレスが大ヒット。目指すのは、質の良い睡眠から始まる豊かな暮らしの実現だ。
「我々はマットレスを販売しているわけじゃない。睡眠の質を売っているんです」
「NELLマットレス」をDtoCで展開するMorght(モート)の土井皓貴は、急成長の秘密をこう語った。一般的に消費者は柔らかめのマットレスを好む。店頭で試したときに寝心地が良く感じるからだ。ただ、柔らかいと寝返りに力を使い、眠りが浅くなりがちだ。一方、NELLは高級マットレスと同等以上の数のポケットコイルを使用して寝返りのしやすさを実現。価格は半分以下に抑えた。2020年10月の販売以来、1日で最大1億円を売り上げ、累計10万本以上のヒットになった。
土井は睡眠オタクだったわけではない。不動産業を営む父を見て育ち、子どものころから起業を決意。高校生のとき大学AO入試対策でスタンフォード大学のカリキュラムに参加し「GoogleやAppleの本社を見て刺激を受けた。自分も早くこんな企業をつくりたい」と、すぐにスタートアップで働き始め、20歳で起業。アプリ事業に挑戦したが、2年間売り上げは立たなかった。最後の勝負として選んだのが睡眠だった。
「当時は起業したばかりで自分の強みなんてありません。チャレンジャーバンク、ドラッグストア、不動産……。社会的課題が大きい市場でアイデアを30個以上あげました。そのなかで注目したのが睡眠市場。世界4位の市場規模がありながら、日本人の睡眠の質や量は足りていません。そこにチャンスがある」
ヒットの要因は寝返りに特化したことだけではない。マットレスは購入までの検討期間が長い商材で、デジタル広告頼りのマーケティング戦略では成果に乏しい。インフルエンサーマーケティングに舵を切ったところ、ブランドへの信頼が醸成され購買につながった。そのブランドを武器に、寝具の関連商材や新事業の展開も目指す。
起業して6年。自分なりの強みができたのかと問うと、土井は不敵に笑った。「マットレスが売れ、社名をNELLに変えて上場する道もあるのでしょう。でも、目指す山はもっと高い。圧倒的な野心が自分の強みです」。
どい・こうき◎1997年生まれ。高校在学中、留学先のシリコンバレーのスタートアップ文化に影響を受け、起業を決意。高校3年時にBranding Engineerへ入社し、イベント事業部の立ち上げや新卒採用に従事。2018年Morghtを創業し、20年「NELLマットレス」の販売を開始。
ジャケット107800円、ハイネックカットソー20900円/ともにチルコロ、パンツ42900円/ブリリア(以上すべてトヨダトレーディング プレスルームTel:03-5350-5567)※チーフは、スタイリスト私物。