事業継承

2024.08.26 11:10

日本型ECロールアップで目指す「300年企業」の土壌づくり:荒井俊亮

荒井俊亮(28)|ACROVE 代表取締役社長執行役員CEO

荒井俊亮(28)|ACROVE 代表取締役社長執行役員CEO

8月23日発売のForbesJAPAN10月号では、次世代を担う「30才未満の30人」を選出する「30 UNDER 30」を発表した。本記事では、30人の受賞者のなかから、ACROVE 代表取締役社長執行役員CEOの荒井俊亮を紹介する。

累計調達額18.4億、約2年で15件のM&A、連結従業員数約220人。新興企業では珍しくロールアップ戦略で伸びるACROVEの流儀とは。

2018年創業のACROVEの事業は、独自のBI(ビジネスインテリジェンス)ツールを生かすEC販売支援とECロールアップ。10以上のブランドを承継してきた。躍進のエンジンはスムーズなM&A(合併・買収)。その秘訣は、何か。

国内小売業者の社長の平均年齢は60.4歳。ファンドに売れば、社員の雇用が守られる保証はなく、成長も不明瞭。ACROVEなら、社員を引き継ぎ、EC支援の知見から成長提案ができる。従業員の幸せを願うオーナー社長の心をつかむ「日本型ロールアップ」が、成長の源泉だ。えんどう豆由来のプロテインで創業した荒井には、商品開発の苦労から、事業とモノづくりへの強い敬意がある。オーナーに会うため、大雪をかき分け、宮城の山奥の工房へも足を運ぶ。「『M&Aは、大人プレイ』といわれるが、本来は引き継ぎ、伸ばすにも、我々のような若い世代がやるべき」

既存商品が売れ続けるとは限らず、新商品の求められ、キャッシュフローが読みにくい小売りは、本来ロールアップには不向き。だからこそ、再現性を実現できた会社に勝機がある。「素敵な新商品は、顧客のニーズからは生まれません」。新しい視点が次々と湧き出る体制へ、会議のつくり方に至るまで、事業・組織戦略で再現性を宿してきた。現在はECによるBtoC事業に飽き足らず、人材育成などBtoB事業のM&Aも行う。

社会の果樹園を創造する──そんなミッションを掲げる荒井にとって、M&Aで結集する事業は、果実だ。「大きな果樹になる事業もあれば、実が落ちて土壌を豊かにする事業もある。常に社会の誰かのためになる果樹園となれば、事業は変わりながらも、時代を超えていけるはず」

目指すは300年続く企業。社会が渇望する果実がいつの時代も実る、時価総額10兆円以上のコングロマリット企業だ。戦争、天災、疫病──100年単位で必ず起きる有事に耐えたのは、もうかる仕組みだけでなく、支える土壌、志のあった企業だけ。それが荒井の持論だ。「今を急成長と、私たちは思っていません。目指すところは、高いので」


あらい・しゅんすけ◎ACROVE代表取締役 社長執行役員CEO。1996年生まれ。学生時代の2018年にアノマ(現ACROVE)を創業。22年ECロールアップ事業拡大。「Forbes 30 UNDER 30 Asia 2024」受賞。

ジャケット97900円、パンツ75900円、ベルト47300円、シューズ137500円/以上すべてイレブンティ(三喜事商Tel:03-3470-8237)、シャツ34100円/ギ ローバー、ネクタイ20900円/ステファノ カウ(ともにバインド ピーアールTel:03-6416-0441)、チーフはスタイリスト私物。

世界を変えうる30歳未満にフォーカスする企画「Forbes JAPAN 30 UNDER 30」、7年目となる今年は30人を選出。これからの未来をつくる彼ら・彼女らが描く「希望」と「新しい未来」へ、ようこそ!
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文=フォーブス ジャパン編集部 写真=帆足宗洋(AVGVST) スタイリング=井藤成一 ヘアメイク=MIKAMI YASUHIRO retouching by Hiroshi Kitaoka (GARABATO)

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