うつ病や双極性障害など精神疾患を抱えていても言わない限り周囲は気づきにくい。そんな親をもつ子ども・若者の頼り先をつくりたいと、平井は支援団体を立ち上げた。
「生涯のうち5人に1人がかかるともいわれている心の病。精神疾患の親をもつ子どもは、ほかの子どもに比べて精神疾患に罹患する率が2.5倍高いといわれています。しかし、日本ではこのような境遇に置かれた人たちへの支援がとても希薄なのです」
そう指摘するのはCoCoTELI代表の平井登威だ。「親の精神状態に生活が左右されたり、親のことを最優先したりする日々が続いた結果、子どもたちのメンタルに影響が及んでしまう」。近年ヤングケアラーへの支援は広がってきているが、精神疾患がある親の元で育った子ども全員がヤングケアラーに該当するわけではない。
CoCoTELIの支援活動は主に3つある。25歳以下の子どもや若者からの個別相談、チャットアプリやオンラインイベントを通じた居場所づくり、ウェブサイトやポッドキャストでの情報発信だ。個別相談には、相談者と同じような経験をしたことがあるピアスタッフとソーシャルワーカーが対応し、実施件数は2024年7月時点で累計250回を超える。
平井自身、精神疾患のある父親や家族との関係に悩み続けた当事者のひとりだ。幼稚園のとき、父親がうつ病になった。状態が悪いと家族に対して怒鳴ったり、暴力を振るったり、時には包丁を振り回したりした。精神的に追い込まれたが、「誰かに相談するという選択肢があることすら思いつきませんでした」。
第三者に初めて打ち明けたのは大学1年生のときだった。SNS上で、自分と似た境遇をもつ人の投稿が目に留まった。すぐに連絡し、家族のことや苦悩を語り合った。こうして出会った友人とともに21年春、オンライン上に精神疾患のある親をもつ子どもの居場所を開設。23年にNPO法人格を取得し代表になった。
平井が目指すのは、精神疾患がある本人も、その家族も生きやすい社会の仕組みづくりだ。
「精神疾患のある人が悪いのではなく、親も子どもも含めた家族が生きやすい社会ではないことが問題なのです。大人が精神科を受診したタイミングなどで子どもや家族に目を向け、支援できるモデルをつくりたい」
ひらい・とおい◎2001年、静岡県生まれ。精神疾患のある父親や家族との関係に悩み続けた自身の経験から、精神疾患の親をもつ子ども・若者の居場所をつくろうと学生団体として2020年にCoCoTELI(ココテリ)を立ち上げ。より本格的に活動を進めるため23年5月にNPO法人化。
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