日本のVFXを先導する存在に
この物語には、野島の成長と別にもうひとつの軸がある。日本のVFXの成長ストーリーだ。今回の受賞で瞬間的に世界と肩を並べたものの、お金や人の面で依然として差は大きい。例えば『ゴジラ-1.0』のVFXスタッフは35人だが、ハリウッド映画は数百人が普通だ。「日本のVFXを盛り上げるには、まずアーティストが世間に認知されて憧れられる存在にならないといけません」
今回賞を取った野島がその役を担うべきではないか。そう問うと、「自分がその立場になると、どうしていいかわからなくなりそうで。でも、もっと何かやります」と照れた表情を見せた。一方で、業界の同世代をたきつけることも忘れなかった。「ひとりだけだと無理。お互いに嫉妬心むき出しでやりあう存在が欲しい。もっとギリギリの勝負がしたいんです」。
確かに物語の盛り上がりにライバルは欠かせない。野島を打ちのめす好敵手が現れたとき、日本のVFX界は活性化するに違いない。
のじま・たつじ◎1998年生まれ、東京都出身。2019年に白組に入社後、山崎貴監督作品をはじめとしてCM、映画、MVのVFX制作に参加。コンポジターとして勤務する傍ら、趣味が高じてエフェクト作業にも参加。『ゴジラ-1.0』で大規模な海のシミュレーションを担当した。
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