芸人としてどう生きるか。信じるのは自分の「主観」だけ:髙比良くるま

自分に向いていることを続けていたら、すぐ結果がついてきた。現在もその延長であり、「お笑いは趣味。仕事の意識は薄い」という。流されるままに漫才師になったくるまらしく、芸人としてのキャリアプランを描いたり目標を掲げることはない。ただ、受け身で漫才をやっているわけでもない。くるまは自らのキャリア観を「客観と主観」という言葉で表現した。

「数年後にこうなりたいから今これをやろうというのは客観ですよね。客観の精度はインプットされたデータ量で左右されます。例えば早くから劇場もテレビもぜんぶやってきた人が描く客観は精度が高い。でも、それらを飛ばしちゃった僕らが客観で目標を立てても中途半端。それなら客観は全捨てで、主観だけでいい。主観は目標を立てず、今だけを見る。客観はほかの人でもできますが、賞レースで早く勝ってまた出ようとしている変なヤツの主観は、きっと意味があるはず」

くるまは今、主観に基づいて何をやりたいのか。最近、令和ロマンのふたりはお笑いに関係ないピンの仕事を増やしている。一般的にピンの仕事の増加は解散の前触れとされる。しかし、そんな見方を一笑に付す。

「相方が受けている仕事は、優しくて朗らかなキャラが求められています。一方、俺はこういう取材で小難しいことを話すわけです(笑)。そうやってそれぞれにキャラができると、普通のコンビニの漫才が『優しいお客さんと小難しい店員』になるかもしれない。今ふたりがお笑いの外でチャレンジしたことが漫才に還元され、型ができそうな気配がある。ぜんぶ漫才のためです」

やはりすべて計算ずくの策士ではないのか。そんな疑問を見透かしたように、くるまは最後にこう付け加えた。

「お笑いの外の仕事も今興味のあることをやっているだけです。それがどんな型につながるのか全然想像つかないし、失敗する可能性もあります。いずれにしても答え合わせは後で誰かがしてくれる。それまで主観で動き続けます」


たかひら・くるま◎東京都出身、慶應義塾大学中退。大学時代の2015年に松井ケムリと結成したお笑いコンビ「令和ロマン(旧・魔人無骨)」のボケ担当。18年にデビューし、6年目の23年に「M-1グランプリ」で優勝した。「ラヴィット!」(TBS系列)の木曜隔週レギュラーなどを務める。

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文=村上 敬 写真=帆足宗洋(AVGVST) レタッチ=北岡弘至(GARABATO) スタイリング=井藤成一 ヘアメイク=MIKAMI YASUHIRO

この記事は 「Forbes JAPAN 2024年10月号」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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