音楽

2024.08.26 11:05

「自分らしくいるのは当たり前」ラップは自分を説明する手段:MFS

MFS(26)|ラッパー

8月23日発売のForbes JAPAN10月号では、次世代を担う「30才未満の30人」を選出する「30 UNDER 30」を発表した。本記事では、30人の受賞者のなかから、ENTERTAINMENT部門を受賞したラッパーのMFSを紹介する。


ライブのMCでいつも「みーんなで幸せになろな」と呼びかけるMFS。「BOW」の世界的ヒットの後も、その才能で多くのリスナーを勇気づける。

「3日後に26歳になるんです」と打ち明けつつ取材に応じたMFS。30歳までにやりたいことは、と尋ねると「20代はまず、働こうと思ってます」と答えた。

それもそのはず、MFSは今勢いに乗っている。2021年に本格デビュー。最初は仲間の勧めで「やってみようかな」と始めたラップだったが、22年にはシングル「BOW」が人気ゲームに使用され、Spotifyで45の国と地域でチャートインするという日本のアーティスト初の快挙を達成した。

個々のワードを感性とともに紡ぐ彼女のリリックからは、凛とした強さと個性が響きわたる。誰にも似ていない。それがMFSの強みだ。楽曲制作におけるインスピレーション源を聞くと「自分です」との答え。「私にとっていちばん大切なのは、リアルなこととオリジナリティ」。他人への愛が深いのも彼女の特長で、楽曲にもにじみ出る。「人の話を聞くことが好きで、友達もどんどん増えていくんです」。

奔放なように見えてしっかり芯がある印象を受けるが、「品っていうものを大事にしています」という彼女の言葉を聞いて納得した。「制作途中のものは絶対にSNSにアップしないし、完成するまでは何も見せたくない。結果で人を納得させたいんです。“そっちのほうがカッコ良くね?”っていうのが自分の美学」。情報があふれるSNS時代だからこそ、そんな彼女の姿勢からにじみ出る“品”に、我々は惹きつけられるのだろう。

ブレイズヘアが印象的なMFSは、アメリカ人の父と日本人の母の間に生まれた。「生まれた時から見た目は人と違うけど、自分が自分でいることは当たり前でした」。そんな自分を説明する手段を、ラップに求めた。「もしラップというツールがなかったら、本当に“意味わかんないヤツ”になっていたと思います」。

今年6月には東京で初めてのワンマンを成功させたMFS。この先いつか世界を変えるなら──?「自分らしくいることが当たり前な世界になってほしいし、そう変えていきたい」とハッキリと答えた。「そうなれば、救われる人も増えると思う。私の曲を通して、伝えていきたい」


エムエフエス◎1998年、東京都生まれ。20歳で大阪に移り、仲間の勧めでラップを始める。半年後の2020年7月に1stシングル「BOW」をリリースし、世界でバイラルヒット。24年4月には1stアルバム『COMBO』をリリースし、6月には東京で初のワンマンを開催した。

世界を変えうる30歳未満にフォーカスする企画「Forbes JAPAN 30 UNDER 30」、7年目となる今年は30人を選出。これからの未来をつくる彼ら・彼女らが描く「希望」と「新しい未来」へ、ようこそ!
【30 UNDER 30 特集号が現在発売中 / 受賞者一覧を特設サイトにて公開中

文=渡辺志保 写真=帆足宗洋(AVGVST) スタイリング=コウガカスミ ヘアメイク=バーバーイケダ retouching by Hiroshi Kitaoka(GARABATO)

この記事は 「Forbes JAPAN 2024年10月号」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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