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CEOs

2024.07.30 13:30

結実した「グローバル戦略」への道

奥田 修|中外製薬 代表取締役社長 CEO

中外製薬(以下、中外)は今年5月、自社で創薬した発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)抗体薬「ピアスカイ」を世界に先駆けて日本で発売した。PNHは患者数国内約1000人強の希少疾患。市場は小さく見えるが、ほかの難病への治験も進んでおり、将来は同社が提携するロシュ・グループ全体で10億スイスフラン超の売り上げを見込む。

日本でピアスカイの薬事承認が下りたのは3月。経営者としてはビジネスへのインパクトが気になるところだが、CEOを務める奥田修がまず感じたのは「やっとここまで来た」という達成感だった。

「この薬をロシュに導出したのは15年。抗体を創薬し、この段階に至るまで10年以上かかっています。その間、抗体をつくる人、毒性を確認する人、抗体を大量に生産する人、臨床試験をする人、マーケティングを企画する人と、多くの関係者がバトンをつないできた。そのことを思って胸がいっぱいになりました」

胸が熱くなった理由はほかにもある。ピアスカイを創製したのは、中外が12年にシンガポールに設立した研究所CPR。ピアスカイは世界各地で申請が完了しており、順調に進めば、CPRのみならずシンガポールにとっても、初めて創薬し、開発に成功したグローバル医薬品となる。

「CPRは5年間の時限研究所としてスタートしましたが、うまくいっているので2度延長。今年2月に時限を撤廃して恒久的な研究所にしました」

ピアスカイは02年のロシュとの戦略アライアンス以降5つめのグローバル製品。その意味でも中外のグローバル戦略を象徴する新薬のひとつといえるが、実は奥田自身も同社のグローバル戦略の申し子である。

大学は地元の岐阜薬科大学へ。医薬の世界を志したきっかけは、祖母の関節リウマチだった。

「祖母は目も悪くなっていました。それでも孫の成長を確かめたいのでしょう。関節が脱臼した手で、小学生の私を抱きしめるのです。いかにも痛そうで、いたたまれなくなった。それが心に残っていて、何とかしてあげたいと薬の道に進みました」

ただ、関心の向かう先は研究より世界だった。薬科大や薬学部では大学院卒業以降に留学するケースが多いが、奥田は学部生でカリフォルニアに留学。岐阜薬科大では初めての事例だった。
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文=村上 敬 写真=苅部太郎

この記事は 「Forbes JAPAN 2024年8月号」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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