ヘルスケア

2024.07.28 12:00

腕と腹部の「余分な脂肪」にアルツハイマー病との関連性? 研究結果

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脂肪が腕と腹部に過剰に蓄積されている場合、アルツハイマー病やパーキンソン病などの神経変性疾患を発症するリスクが高まる可能性があるという。

身体組成と脳の変性の関連性を調べるため、40~70歳の41万2961人を対象に分析調査を行った結果、およそ9年の追跡期間中に神経変性疾患を発症した人は8224人にのぼり、多くがパーキンソン病、またはアルツハイマー病その他の認知症と診断されていた。

米国神経学会が発行するジャーナル「Neurology」に発表されたこの研究結果によると、腕と腹部に過度の脂肪が蓄積していた人は、そうでない人と比べ、これらの疾患を発症するリスクがそれぞれ18%、13%高くなっていた。また、腹部に脂肪が多い場合、このリスクは女性よりも男性の方が、わずかに高かったという。

一方、筋力が高い人は、神経変性疾患を発症するリスクが25%以上、低くなっていた。過去のその他の研究でも、除脂肪体重(筋肉量)が多いほど、神経変性疾患のリスクが低下するとの結果が示されている。

だが、この点に関するこれまでの研究結果は一貫性に乏しく、研究者らは、筋肉との関連性はあるものの、「重要な役割を担うのは筋肉の量ではなく質」の可能性があると指摘している。

Neurologyに論文が掲載された研究ではそのほか、神経変性疾患のリスク要因の1つとされている心血管疾患(心臓疾患や脳卒中など)の影響についても調査を行った。

その結果、調査対象者のうち、腹部と腕に余分な脂肪が付いていた人はそれぞれ約35%、22%が、調査開始から神経変性疾患を発症するまでの間に、いずれかの心血管疾患を発症していたことがわかった。

研究チームは、腕と腹部に過度の脂肪がついている人の心血管疾患のリスクに早期に対応することが、神経変性疾患の発症リスクを低減させることにつながるとの見方を示している。

この研究結果をまとめた論文の著者、中国・四川大学のHuan Song教授は、神経変性疾患の予防には、「一般的な体重管理よりも、胴体と腕に蓄積した脂肪を減らし、同時に健康的な筋肉の発達させるための介入の方が効果的な可能性がある」と述べている。

神経変性疾患の発症につながる理由は?

腹部の脂肪が多いことが神経変性疾患の発症リスクを高める理由の1つは、内臓脂肪だとされている。内臓脂肪は腹部の臓器につく脂肪で、外見ではわかりにくいことから、「隠れ脂肪」とも呼ばれている。

ジャーナル「Aging & Disease」に2023年に発表された研究結果によると、内臓脂肪が多い中年層の脳内では、アルツハイマー病との関連性が指摘されているアミロイドβタンパク質とタウタンパク質の蓄積量が多くなっていた。過去のその他の研究でも、肥満が神経変性疾患の発症リスクを大幅に高めるとの結果が示されている。

脳は加齢とともに自然に縮小するものだが、英国の慈善団体アルツハイマーズ・ソサエティは、そのプロセスは肥満によって加速する場合があると説明している。

また、ジャーナルLife Sciencesに掲載された論文よれば、脂肪が過度に蓄積されることで起きた代謝の変化が中枢神経系にダメージを与え、それが神経変性疾患の要因として知られる神経細胞死につながっている可能性があるという。

forbes.com 原文

編集=木内涼子

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