砂嵐や山火事の煙、排ガスやばい煙などの大気汚染物質を含んだ降雨のことを、こう呼ぶ。フロリダ州の場合、北アフリカのサハラ砂漠で上空に巻き上げられた砂塵が東寄りの風に乗って大西洋をわたってきて、夏の風物詩である雷雨とともに降り注ぎ、ガーデンチェアや窓ガラス、車の表面などにべったりと皮膜状に付着する現象だ。
ダーティレインに含まれる砂塵のせいでエアコンが詰まってしまうこともあり、フロリダに暮らす人々にとっては掃除を余儀なくされかねない厄介な相手である。
サハラ砂漠の砂がフロリダに降る?
ダーティレインというのは専門的な用語ではなく、非公式な呼び名だ。フロリダ州にダーティレインを降らせる原因は、「サハラ大気層(Saharan Air Layer: SAL)」と呼ばれる非常に乾燥した空気の層である。春の終わりから秋の初めにかけてサハラ砂漠上空に形成され、大量の砂塵を含んでいる。米海洋大気庁(NOAA)はSALについて「アフリカから数千キロも移動して影響を及ぼす可能性がある」と説明している。
SALのピークシーズンは6月下旬~8月中旬で、赤道付近で発生する大気の波「熱帯波」によって大量の砂塵が巻き上げられ、3~5日ごとに高温の砂の雲が発生する。そして貿易風がこの砂雲を米南部のフロリダ州やテキサス州まで運んでくるのだ。
巻き上げられた砂塵は通常、高度1600メートル付近に厚さ3~4キロの層を形成する。米FOXテレビ傘下の地方局FOX35オーランドによれば、今年のSALは7月に観測されたものでは観測史上最大級だという。
NOAAの気象学者ジェイソン・デュニオンは、今週のSAL到来について「地上では上空の乾燥した空気を体感することはない。南フロリダの夏らしい連日の蒸し暑さに、ひと息つけそうだ」と述べた。極度に乾燥した大気は、夏の午後につきものの積乱雲の発達を抑えるため、にわか雨は少なくなるという。しかし、いったん雨が降れば、雨粒と一緒にサハラ砂漠の砂塵が降り注ぐことになる。