「人(社員)の幸せを中心に据えた経営」を「人的資本経営」のひとつの可能性と捉え、このような経営を実践し、付加価値の向上を目指す企業経営の拡大と浸透のために、経済産業省近畿経済産業局では、2022年度から「BE THE LOVED COMPANY PROJECT」を推進している。その報告書「BE THE LOVED COMPANY REPORT 2.0」から、自律的な人を育む組織づくりをそれぞれの立場から模索しつづける3人の講演を紹介したい。
2024年3月、経済産業省近畿経済産業局は「BE THE LOVED COMPANY PROJECT」の取組のひとつとして、京都市にある建仁寺塔頭両足院にて「愛される会社」が有する自組織の価値に向き合うためのイベント「The DIALOGUE」を開催した。
最初のセッションでは、「自律的な仲間と組織に『向き合う』」と題し、「組織のネコ」をはじめ組織の中でもっと自由に働く可能性を提唱する仲山考材 代表取締役/楽天グループ 楽天大学学長 仲山進也が司会となり、1924年創業の木村石鹸工業代表取締役社長 木村祥一郎と1934年創業の東海バネ工業代表取締役社長 夏目直一が登壇し、老舗企業の変革を紐解いた。
前編と後編に分けてお送りする。
創業100年釜焚き製法の木村石鹸、大量生産しない東海バネ工業
仲山:本日ファシリテーターを務めます仲山です。よろしくお願いします。では、みなさん自己紹介をお願いします。木村:大阪の八尾市にある石鹸のメーカー、木村石鹸工業の木村です。石鹸といっても色々ありまして、私たちは主に洗浄剤の成分としての石鹸を作っています。それをいろんなものに混ぜ合わせて、洗浄剤を作っている。体を洗ったり、手を洗ったり、衣類を洗ったりする洗浄剤全般。石鹸自体は、釜焚き製法でつくっています。日本でも少なくなりました。会社は4月でちょうど創業100周年を迎え、私が4代目の代表をしています。
夏目:東海バネ工業の夏目です。社名の通り、バネを作る会社でございます。業界的にいうと、バネは大量生産型の業界です。その中で、私たちは大量生産を一切やっておらず、平均受注ロット5個、オーダーメイドのバネに特化したバネ屋です。私どもは創業90周年になりまして、代表で言うと3代目になります。
会社の経営としては、所有も経営そのものも完全非同族。要するに赤の他人で運営している会社です。大量生産を一切やらない私たちの生産方式は、「多品種微量」と言っています。そんなスタンスで開発されたバネがどんなところで使われるかというと、2024年2月17日にうまくいきました、H3ロケットですね。第1段エンジンと第2段エンジン、それからロケットの切り離しのところに当社のバネをお使いいただいています。特殊な性能が欲しい、というところのバネを提供させていただくのが私どもの生業であり強みとしているところであります。
仲山:僕は楽天が20名くらいの時に入りまして、楽天市場にネットショップを出している店舗さん、主に全国各地の中小企業の人たちが集まって、どうやったらより良い商売ができるのか、いい会社がつくれるのかを学び合う場として、「楽天大学」を2000年に立ち上げました。たくさんリアルの場をつくっているうちに、横の繋がりができて、「楽天市場の店長さんって仲良いね」って言われるコミュニティが出来上がりました。そうしたことを手がけてきています。
2007年からは、兼業自由で勤怠自由の正社員という働き方をしています。自分の会社もあって、昨年からは、松本山雅FCでチームビルディングのお手伝いをさせてもらっています。