満身創痍のISS
近年、ISSのモジュールからは微量の空気が漏洩し続けている。2024年2月には、その量が1日当たり0.9kg以上に増加したことをNASAが報告した。安全上のリスクはないが、ISSではこうした事態が常態化している。ISSの最初のモジュールが打ち上げられたのは1998年。それから四半世紀以上が経過したいま、ISSの老朽化が進んでいる。現時点では2030年にISSの運用を停止し、2031年に太平洋に制御落下させるプランが有力視されている。制御落下とは、宇宙機をコントロールしながら大気圏へ再突入させ、予定した領域に落とすことを意味する。
ISSは高度410kmの地球周回軌道を秒速7.5kmで航行している。その船体には地球の重力が働いているが、猛烈な速度で航行しているため遠心力も働き、それらがバランスすることで地表に落ちることなく、地球を回り続けている。
このISSを落とすには速度さえ落とせばよい。そのためには宇宙船をISSの機首にドッキングさせ、ISSの進行方向に向けてエンジンを噴射する。するとブレーキがかかって速度が落ち、機体に掛かる遠心力よりも地球の重力が勝って大気圏に再突入する。
ただし、ISSの総質量は450トン。高速で飛ぶ巨体には大きな慣性が働いている。そのためISSを落とすには強力なパワーが必要だ。かつて2022年にNASAが公表したプランでは、ロシアの輸送機プログレス3機を順次ISSにドッキングさせ、そのエンジン推力で減速するよう計画されていた。しかし、今回スペースXが発表した機体によると、その任務を1機だけで完遂するようだ。