3)眠る場所の環境に問題がある
睡眠の質を向上する取り組みには、寝る前のルーティンの有効性(あるいは非有効性)が関わってくる。しっかりと休める環境づくりは、良好な睡眠衛生の確保に欠かせない要素であり、環境条件(室温、騒音、光、寝床の快適さ、眠りを妨げる電化製品)を理想的な状況に保つことが大切だ。米国立衛生研究所(NIH)によれば、こうした環境条件は、適切な睡眠の確保、ひいては睡眠に関連する全体的な健康度に大きな役割を果たし得る。だが、物理的な環境条件だけでは十分ではない。理想的な睡眠環境をつくるには、眠りにつく前の時間帯に、落ち着いた精神状態を保つことも必要だ。
そうした対策の一例としては、「暗いニュースを見聞きしないようにすること」が挙げられる。こうしたニュースをきっかけに、ネガティブな考えが止まらなくなり、過覚醒がひどくなる場合があるし、前述した代償的トラウマに陥るおそれもある。
一方で、今の社会に存在する「睡眠の不平等」についても、無視することはできない。学術誌のBehavioral Sleep Medicineに掲載された新たな研究によると、都市部の貧困に関連する環境要因(騒音、不快な室温、光に照らされる環境など)が、子どもの睡眠を阻害し、喘息症状の悪化につながっている可能性があるという。
確かに、睡眠については、個々人が適切な環境を設け、新たなアプローチを取り入れ、それぞれの環境で自分にとって効果的な対策を取るべきだ。とはいえ、良好な睡眠環境の確保は、単なる個々人の責任として扱われるべきではない。悪化する一方の睡眠健康問題に対処するリソースに欠けている人たちに対しては、社会が公平性を担保する制度を導入することもできる。具体的には、睡眠に関する教育やリソースを提供する地域単位のプログラムや、健康的なワークライフバランスを促進する政策などが考えられる。
睡眠が私たちの心身の健康や生産性と深く関係していることについては、ずっと以前から多数の研究が発表されている。最近になって事態に進展は見られるものの、睡眠不足はいまだに、私たちの社会が抱える問題だ。睡眠の優先度を上げることで、意思決定や創造性、生産性は大幅に改善する。
今こそ、睡眠と休息に投資し、生活の質を向上するべき時だ。著名な米国人SF作家のロバート・A・ハインラインがかつて述べたように、「幸福は、十分な睡眠の内にある」のだから。
(forbes.com 原文)