セプタム・アーム? それは何だ、と思う人も多いだろう。
どのような医学用語集にも、答えは載っていない。それでも、この奇妙な響きがする腕に関する動画は、人気SNSのTikTokでおすすめの検索用語として登場した後、注目を集め続け、この言葉の意味を巡って大混乱を巻き起こしている。
ネタバレすると、セプタム・アームとは、2つの単語がランダムに並べられ、意味不明な言葉になったものだ。セプタムとは「隔壁」「隔膜」という意味を持つ言葉で、たとえば鼻中隔(nasal septum)は、左右の鼻穴の真ん中にある壁のことだ。上腕には、セプタムは存在しない(ある困惑したティックトッカーの言葉を借りれば、「次は何? アームピット・フィート(脇足)? 冗談でしょう?」)
セプタム・アームという言葉はバカげているかもしれないが、これがどのようにTikTokの集団意識に抱き付いたかという物語は、SNSの「手に負えない勢い」に関するシリアスな教訓につながる。
さらに重要なのは、この奇妙な物語は、今の女性たちが感じている切実な圧力を反映していることだ。つまり、アプリのフィルターや編集ツールで、即座かつ劇的に自分をつくり変えることができる世界のなかで、「幅の狭い、文化的な美の基準」に従わなければならないと感じる圧力のことだ。
諸研究によれば、SNSは若い女性が自分自身についてどう感じるかに悪影響を与えている。こうした研究結果は、TikTokで多くの若い女性がセプタム・アームをどう受け止めたか、ということに関する説明になるかもしれない。彼女たちは、上腕の裏側にある、たるんだ上腕三頭筋や、腕を下ろして体に沿わせたときに上腕がたぷんと広がる様子に関する手厳しい表現だと解釈している。
こうした女性たちは、TikTok上で、自分は傷つき、怒っていると語っている。この流行語は、自分たちをあざけり、自己嫌悪に陥らせようとする新たな試みのように見える、というのだ。
そして一部の女性たちは、美しく見えるよう入念に加工されたSNSの投稿や、AIが生成した美しいインフルエンサーに負けずに反旗を翻し、セプタム・アームをボディ・ポジティブのシンボルと捉え、自分たちの上腕を誇示する動画を投稿している。
あるTikTokユーザーは、ピンクのドレスに身を包み、白いジャケットを肩から腰のまわりに下ろして上腕をあらわにした上で、自信たっぷりに体を回転させる動画を公開した。この動画には、「『セプタム・アーム』が何かを知ったので、今日はもうこのジャケットを着ない」と書かれている。