ただ、健康に害を及ぼす可能性があるのは、汚染された水だけではない。観戦のためにパリを訪れる人たちにとってのリスクには、次のようなものがある。
デング熱
特に懸念されるのが、デング熱をはじめとするアルボウイルス(節足動物媒介性ウイルス)感染症だ。パリでは昨年9月に渡航歴のない感染者が報告されており、南欧以外の欧州でも局所的に感染が起きることが初めて確認された。世界中で感染者が増加しているデング熱は、ウイルスを持つヒトスジシマカなどに刺されることで感染する。この種類の蚊が特に問題となるのは、メスが産卵のために必要とする水がごくわずかな量(ボトルのキャップ1杯ほど)であり、卵は何カ月間も、乾燥した状態に耐えられるということだ。
また、大会期間中にはチクングニア熱、ジカ熱、マラリアなど、その他のアルボウイルス感染症が流行している国からも、旅行者が訪れる。過去にフランスで報告されたマラリア感染者は、ほとんどが国外で感染し、帰国した人たちだった。
新型コロナウイルス・インフルエンザ
世界保健機関(WHO)によると、南米でインフルエンザA型(H3N2)、アフリカとオセアニアでインフルエンザA型(H1N1)の感染者数が増加している。新型コロナウイルス感染者も、欧州各国(特に英国、ポルトガル、ギリシャ)のほか中国、タイ、ニュージーランドで増えている。米国でも、下⽔中のウイルス濃度が上昇していることが、最近の調査で確認されている。
競技に出場する選手たちは、多くが感染対策としてマスクをしており、ベルギーの選手たちには、着用が義務付けられている。スイスと英国の選手のなかには、感染のため出場を辞退した人たちもいる。