一方で、自分から動き出さないと、そもそも誰にも出会えないし、何も起こらない。「自分の意志でなんとかしないといけないもの」でもある。
「自分の意志だけではコントロールできないけれども、自分の意志でなんとかしないといけない」という矛盾を孕んだものと向き合うことで得られるメリットは、「自分と他人にやさしくなれること」だ。
どんなに最善を尽くしても、うまくいかないことがある。どれだけ時間をかけて関係性を作っても、一瞬で壊れてしまうこともある。自分を責めても相手を責めても問題は解決しないのであれば、あとはもう、ありのままの現実を受け入れるしかない。
人は現実を受容することによって、自分にやさしくできるようになる。自分にやさしくできるようになれば、他人にもやさしくできるようになる。
思い込みにとらわれて、自分や他人を許せなかった人が、女性用風俗という場で身も心も裸になり、思い込みやコンプレックスを乗り越えていくことで、自分も他人も許せるようになっていく。彼女たちがやさしさを身につける過程を読むことで、読み手にもやさしい気持ちが伝わってくる。
恋愛やセックスに関する思い込みに囚われている女性にとって、本書はまさに「読む処方箋」になるはずだ。ぜひ本書を手にとって、登場する女性たち、そして著者のやさしさに癒やされてほしい。
坂爪真吾◎1981年新潟市生まれ。NPO法人風テラス理事長。東京大学文学部卒。 新しい「性の公共」をつくるという理念の下、重度身体障がい者に対する射精介助サービス、風俗店で働く女性のための無料生活・法律相談事業「風テラス」など、社会的な切り口で現代の性問題の解決に取り組んでいる。2014年社会貢献者表彰。 著書に『はじめての不倫学』『誰も教えてくれない 大人の性の作法』(以上、光文社新書)、『セックスと障害者』(イースト新書)、『性風俗のいびつな現場』(ちくま新書)、『孤独とセックス』(扶桑社新書)など多数。