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2024.08.07 15:15

ふつうの女性会社員が「男を買う」時代─ 『ルポ「女性用風俗」』を読む

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彼女たちの語り、そして彼女たちの声に耳を傾ける著者の語りに共通する点があるとすれば、それは「やさしさ」だ。恋愛やセックスは、いずれも相手がいて初めて成り立つものであるがゆえに、「自分の意志だけではコントロールできないもの」である。
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一方で、自分から動き出さないと、そもそも誰にも出会えないし、何も起こらない。「自分の意志でなんとかしないといけないもの」でもある。

「自分の意志だけではコントロールできないけれども、自分の意志でなんとかしないといけない」という矛盾を孕んだものと向き合うことで得られるメリットは、「自分と他人にやさしくなれること」だ。

どんなに最善を尽くしても、うまくいかないことがある。どれだけ時間をかけて関係性を作っても、一瞬で壊れてしまうこともある。自分を責めても相手を責めても問題は解決しないのであれば、あとはもう、ありのままの現実を受け入れるしかない。
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人は現実を受容することによって、自分にやさしくできるようになる。自分にやさしくできるようになれば、他人にもやさしくできるようになる。

思い込みにとらわれて、自分や他人を許せなかった人が、女性用風俗という場で身も心も裸になり、思い込みやコンプレックスを乗り越えていくことで、自分も他人も許せるようになっていく。彼女たちがやさしさを身につける過程を読むことで、読み手にもやさしい気持ちが伝わってくる。

恋愛やセックスに関する思い込みに囚われている女性にとって、本書はまさに「読む処方箋」になるはずだ。ぜひ本書を手にとって、登場する女性たち、そして著者のやさしさに癒やされてほしい。


ルポ 女性用風俗』(2022年、菅野久美子著、ちくま新書)





坂爪真吾◎1981年新潟市生まれ。NPO法人風テラス理事長。東京大学文学部卒。 新しい「性の公共」をつくるという理念の下、重度身体障がい者に対する射精介助サービス、風俗店で働く女性のための無料生活・法律相談事業「風テラス」など、社会的な切り口で現代の性問題の解決に取り組んでいる。2014年社会貢献者表彰。 著書に『はじめての不倫学』『誰も教えてくれない 大人の性の作法』(以上、光文社新書)、『セックスと障害者』(イースト新書)、『性風俗のいびつな現場』(ちくま新書)、『孤独とセックス』(扶桑社新書)など多数。

文=坂爪真吾

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