例えば「治療の腕前」を誇ろうとしても、医療広告ガイドラインの壁に直面する。「治療技術が秀でているので特定の病気が治る」といった類の表現は、固く禁止されているからだ。同じ治療を行っても、人によって治療結果は異なる。そうであれば「効果効能をうたうのは誤解を招く可能性があるので避けるべき」という考え方だ。
その結果、医師は電信柱や駅で「ただクリニック名を記載するだけ」の広告を細々と打ち続けている。それは「ほかに手の打ちようがない」という消去法の選択だったのではないか。インプラント専門の歯科医院が大規模に看板広告を展開し、成果を上げた事例もあるが、相当の資本力がなければ困難だ。
良心的な治療を続ける医師やクリニックが、どうすれば地域の住民に存在を知ってもらい、理解してもらえるのか。情報収集手段の主流がネットになっている現代において、2006年のローンチ以来多くのクリニックに支持されているのが、総合医療情報サイト「ドクターズ・ファイル」だ。
身近な「医療」を少しでも良くしたい
「ドクターズ・ファイル」は、約16万件のクリニック・病院の情報を掲載している。また、実際にスタッフが2万5000件にのぼるクリニックを訪問し、取材記事を書いている。記事は、徹底的に「医師本人」に焦点を当てるというスタイルだ。
「患者がもし自分の家族だったら、どんな説明をして、どんな治療を提供したら良いか?と考えている」というような診療の基本スタンス。「地域で以前開業していた医師が閉院することを知り、役に立ちたいと思った」など「開業の地」を選んだ理由。「現状の治療だけでなく、5年後、10年後と先を見据えて患者の健康寿命を延ばす手伝いをしたい」といった医師としての想いなど、患者が知りたい医師の人となりが丁寧に取材されている。