以前からこのように活気があったわけではありません。実際、2016年に私が参加したカンファレンスでは、「有望な機会はすべて取り尽くされてしまったようだ」とVCたちがパネルディスカッションで嘆いていたのを覚えています。ブロックチェーンやライブコマースならまだ希望があるなどと話していましたが、SaaSについては一言も触れていませんでした。一方で、当時のCoral Capitalは、SmartHRの持分をできる限り増やそうと静かに投資を進めていました。同社は、今ではここ10年で最も重要な日本のSaaS企業の1つとして注目されています。
Coralはほかにもカケハシやカミナシ、hacomono、primeNumber、dinii、movなど、多くのSaaS企業に投資してきましたが、確かに1000億円超の企業価値に到達することが期待できる機会は、近年ますます少なくなってきています。その限られた機会を巡る投資家間の競争が激化し、評価額をつり上げているのが現状です。幸い、Coralはタイミング良く上記の企業に投資できたため、投資額に対して大きなリターンを見込んでいます。しかし、今後はどうでしょうか。これほど多くの投資家がSaaSに注目している中で、新たな世代のSaaS企業からも同じようなリターンを得ることはできるのでしょうか。