2024年7月にACTAが公表した報告書「Losing America’s Memory 2.0(米国の記憶の喪失2.0)」では、米国内の大学・カレッジに通う学部生3026人を対象に、5月10日~6月19日に行った35問からなるアンケート調査の結果をまとめている。企画・実施したのは、大学生を対象にした調査・分析プラットフォームのCollege Pulse(カレッジ・パルス)で、誤差はプラスマイナス約2.7ポイントだった。
主な結果を見ていこう。
・(第4代大統領である)ジェームズ・マディソンが「合衆国憲法の父」と呼ばれていることを知っていた学生は、わずか31%だった
・学生の60%は、米連邦議会の上院議員と下院議員の任期を正確に答えられなかった
・カマラ・ハリス副大統領が上院議長であることを知っていた学生は27%で、28%はジョー・バイデン大統領が上院議長だと思っていた
・連邦最高裁判所長官がジョン・ロバーツがであることを知っていた学生は37%だった。16%はクラレンス・トーマス(同裁判所判事)だと回答した
・「人民の、人民による、人民のための政治」というフレーズが、ゲティスバーグ演説(南北戦争中の1863年にエイブラハム・リンカーン大統領がペンシルベニア州ゲティスバーグで行った有名な演説)で口にしたものだと知っている学生は、23%にすぎなかった
・下院議長がマイク・ジョンソンであることを知っている学生は、35%だった
・憲法修正第13条は政府が奴隷解放を目的として制定したものだと知っている学生は、28%のみだった
・米立法府に宣戦布告の権限があることを知っている学生は32%だった
・ドナルド・トランプ前大統領の弾劾裁判が近年に2回行われたにもかかわらず、米大統領の弾劾が上院で行われることを知っている学生はわずか32%だった。30%の学生が最高裁判所で行われると思っていた
・最高裁判事の人数が合衆国憲法で明確に定められていないことを知っている学生は25%だった。「判事は9人必要だ」と誤った認識を持っていた学生が33%に上った
ACTAのマイケル・ポリアコフ会長は、次のように述べている。「惨憺たる調査結果によって、大学やカレッジに通う近ごろの学生は、米国の歴史や国家の中核をなす理念・価値観についてほとんど知らないことが明らかになった。これは、私たちがいま直面している複雑で激しい論争を理解するための指針や、わが国の誇りであり世界を勇気づける自由な法制度を守り抜くための道しるべを持っていないということだ」
「理解できないものを守ることはできない。米国が独立し、民主共和制国家が誕生してからまもなく250年を迎えるにあたって、誇るべきものはたくさんある。しかし、世界最古の民主主義国家であるからといって、民主的な共和制国家の未来が保証されているわけではない」
ACTAはさまざまな取り組みを行っているが、かねて米国の歴史と政治に関する課程の履修を米大学の卒業要件とすべきだと訴えてきた。
その一環として市民教育に関する報告書をまとめており、2000年に「Losing America’s Memory(米国の記憶の喪失)」、2016年に「A Crisis in Civic Education(市民教育の危機)」、2019年に「America’s Knowledge Crisis(米国における知識の危機)」を発表している。また、大学評価ツール「What Will They Learn?」を独自に開発し、全米教育機関1100カ所の必修科目について評価している。
(forbes.com 原文)