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国内

2024.07.24 09:15

創業6期目で退職者ゼロ グリーンスプーンは能力で人を採用しない

グリーンスプーン代表の田邊友則(撮影=林孝典)

2019年の創業以来、メインディッシュやサラダ、スープなど60種類以上の冷凍ヘルシー食材をサブスクリプションで提供しているグリーンスプーン。2024年5月には、累計会員数が昨年同月比の2倍となる15万人に達し、ファミリーマートでは期間限定でスムージーの販売を行った。そして、この6月には江崎グリコにグループインし、完全子会社となった。


 
ここ1年間で事業を大きく伸ばし、イグジットも果たした同社だが、事業成長とは異なる観点でも注目に値する成果を出している。それが、創業6期目にして退職者がゼロであるということだ。
 
現在の社員数は20人で、代表の田邊友則は「まだ小さな組織ですから」と謙遜をするが、6期目で1人も辞めていないというのは珍しい。いまは新卒社員の約3割が3年以内に退職するとされ、転職希望者は増加傾向にある。それでも社員から退職の相談をされたことすらもないと田邊は語る。

採用率は1パーセント、能力で選ばない

グリーンスプーンが退職者ゼロを実現している要因の1つが採用の基準にある。一般的に採用面接では、入社理由や経歴、スキル、自身の強みや弱みといったことに重点を置く。しかし田邊は「これまで応募者を能力や経歴で選んだことは一度もない」と言う。重視しているのは、自分の幸せに責任を持つ自責の人かどうかだ。
 
「メンバーはみな、ビジョンや事業を魅力的に感じていて、だからこそ、それが多くの人に届くことが幸せだと思っています。その気持ちが持続する限り、辞める理由はないのではないでしょうか」(田邊)
 
能力は他の企業でも転用できるが、ビジョンや事業内容への共感は、その企業だからこそ生まれる。グリーンスプーンに関わることが幸せであると本心で思っている人を採用することで、退職を防止しているのだ。ただ、これには忘れてはいけない前提があるという。
 
「代表が誰よりもビジョンの実現を信じて仕事に取り組んでいること。情熱は必ず現場に波及しますから」
 
こう語る田邊だが、では、幸せに対して自責というのはどのように見極めるのか。田邊は応募者にこう問いかける。「あなたの人生において、してよかったと思う意思決定ランキングベスト3を教えてください」。
 
この問いには、大学入学時の上京、新卒での企業選び、転職、結婚など、さまざまな回答が返ってくるが、採用面接ではその意思決定に至った過程をさらに深堀りしていく。
 
応募者が取り繕わずに自分の言葉で語っているかどうかを見究めるのは、感覚的な要素も大きいが、わかりやすく言えば「転職は友人の勧めもあり……」などといった他人軸が垣間見える候補者は、グリーンスプーンでは採用されないという。

加えて、その人を好きになれるかどうかも踏まえ、採用者を選んでいる。例えば、創業メンバーで同社COOの黒崎廉は大学時代にアルバイト先が一緒だった親友であり、同じく立ち上げから苦楽をともにしてきた執行役員の小池優利は田邊がかつて勤めていたサイバーエージェントの同期だ。
 
2人とも「自分の責任を持ってやりきる性格で、そのうえ人の気持ちが考えられる人たち。人として好きだから一緒にやろうと声をかけた」という。
 
「起業は自分の人生をかけるプロジェクトですが、一緒に働いてくれるメンバーのためにも本気でやろうという気持ちです。それができているのは、彼らを好きだと思えるからです」
 
このような基準からすれば、代表の田邊や会社の風土に合い、自らが自責の人であるというエピソードを披露すれば採用されるのではないかとも思われるが、そういったことはほとんどない。驚くべきことに、応募から採用に至る割合は、わずか1パーセントというのだ。
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文=露原直人 撮影=林孝典

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