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若くして個人投資家としての名を挙げた片山晃氏。(フォーブスジャパン8月号より)



本物の投資家ほど、実は利他主義であり、投資行動が未来を変える原動力になっている。
『投資家が「お金」よりも大事にしていること』の著者であり、レオス・キャピタルワークス取締役CIOの藤野英人氏が注目するステキな投資家とは?


片山 晃 / カリスマ個人投資家を経てベンチャーキャピタルを創業

65万円が25億円に増えても高級車買わない元「ネトゲ廃人」

次代を担う、若き長期投資家も、徐々に育ってきている。「五月」というハンドルネームで知られる個人投資家・片山晃氏が、その筆頭格だろう。

個人投資家というと、「デイトレーダー」のように短期売買を繰り返しているイメージが先に立つが、片山氏の投資は、オーソドックスなファンダメンタルズ分析に基づいた銘柄選びが信条。現在33歳。山形県出身で、高校卒業後、大学をドロップアウト。専門学校も長続きせず、自分の部屋に閉じこもったまま4年間、インターネットゲームにはまった「ネトゲ廃人」だった。

そんなある日のこと、株式投資を題材にしたテレビドラマを見て、彼のなかで何かが動き始めた。
「株式市場って、世界最大のゲームセンターじゃないか」
 
アルバイトで稼いだ65万円を握りしめ、株式投資の世界に入っていった。最初はデイトレード。しかし、現実は厳しく、デイトレードの神は、彼に微笑んではくれなかった。その後、リーマン・ショックが直撃。株価が急落するなか、彼はふと、こう考えたという。
「あれだけ株価が高かった銘柄が、バーゲンセールになっている。これに投資すれば儲かるのではないか」

ここから片山氏の快進撃が始まった。毎朝早く起き、自宅近くに借りた4畳半のアパートに出社。
朝の7時から夜11時まで、TDネット(適時開示情報伝達システム)で公表される企業の開示情報すべてに目を通し、業績はよいのに株価が割安に放置されている企業の株式に投資した。
「いつか、誰かが、この会社の価値に気付いてくれるはずだ」と信じて……。

結果は言わずもがな。運用資産は25億円まで膨らんだ。「五月」という名前が話題になっていたとき、私は彼に直接会う機会に恵まれた。話を聞くと、自分が行っている投資に対し疑問を抱いているという。

「それなら一度、私たちと一緒に仕事をしてみて、投資の意義を考えてみてはどうだろう」
そう提案したところ、彼は首を縦に振ってくれた。彼が弊社のアナリストとして働き始めた頃、何となく疑問に思っていたことを聞いたことがある。

「なぜ、1,000万円、1億円と運用資産が増えたとき、スポーツカーや高級な服を買ったりしなかったの?」そう質問したくなるくらい、彼の生活は質素だったからだ。私の質問に対する彼の答えを、今も覚えている。
「周りでそういう人もいましたが、それで終わりでしたね」

悩みながらも、彼はわかっていた。投資で増やしたお金を、「消費を活性化させるため」などと嘯いて浪費するのが無駄だということを。そして本当に大事なのは、質素倹約をしながら1円でも多くのお金を再投資し、世の中に還元していくことだということを。

彼は今、レオス・キャピタルワークスから離れ、自分でベンチャーキャピタルのシリウスパートナーズを立ち上げた。私たちと一緒に仕事をした2年間で、彼なりの答えが見つかったようだ。それは、アイデアはもっているけれどもお金がなくて動けない人に対して、お金を付けていく仕事だ。あと20年経ったら、日本のベンチャーキャピタル最大手・ジャフコを超える会社にしたいと言う。

ベンチャー投資では日本を一歩も二歩もリードしている米国では、ビジネスで成功した人がパートナーとなり、スタートアップ企業に対し資金提供する仕組みができ、経済全体や株式市場の活性化につながっている。それを日本でも実現したいというのが、彼の目下の夢だ。

まだ33歳の彼にとって、これから少なくとも20年間は、日本の、いや世界の資本市場のど真ん中で勝負できる気力も、体力も持ち合わせている。
20年後、私はもう十分に老人になり、今の仕事を続けているかどうかはわからないが、そのときがきたら、50代でまだ現役バリバリの彼から、いろいろな話を聞いてみたいと思っている。

鈴木雅光 = 構成 ヤン・ブース = 写真 東海林巨樹 = イラスト

 

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