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世界的ベンチャーキャピタリストの村口和孝氏。その手腕はいかにして磨かれたのか。(フォーブスジャパン8月号より)



本物の投資家ほど、実は利他主義であり、投資行動が未来を変える原動力になっている。
『投資家が「お金」よりも大事にしていること』の著者であり、レオス・キャピタルワークス取締役CIOの藤野英人氏が注目するステキな投資家とは?


村口和孝 / シェイクスピアの演出で身に付けた深い洞察力を持つベンチャー投資家


優れた起業家を発見し、世に出す2つの力を兼ね備えた名伯楽

世界でトップクラスのベンチャーキャピタリストが、日本にもいることをご存じだろうか。
日本テクノロジーベンチャーパートナーズのジェネラルパートナーである村口和孝氏だ。ベンチャー投資の名伯楽といってよい。

中国に「名馬はどこにでもいるけれども、伯楽は一人しかいない」ということわざがある。伯楽とは、馬の素質の良否を見分け、名馬を育てた伝説的調教師。百里を走れる馬を探し、鍛え上げる。

ベンチャーキャピタリストは、価値あるビジネスを創造する企業を見つけ、育成し、上場まで漕ぎ着かせるのが仕事であり、まさに伯楽そのものだ。その伯楽のなかでも、名伯楽と呼ばれる数少ない人物が、村口氏なのである。

名伯楽がどれだけ凄いのか。それは、投資の成功実績を見ればよくわかる。打率3割で天才といわれるベンチャーキャピタルの世界で、村口氏はなんと打率5割を誇る。これまで実現したキャピタルゲインは250億円以上と、国際的にも高水準だ。言うなれば、過去4割バッターですら出ていない大リーガーの中に、いきなり5割バッターが登場したようなものである。

村口氏は84年にジャフコに入社し、87年に北海道ジャフコに出向した。このときの活躍ぶりは伝説となっている。何しろ、彼が北海道にいた7年間だけ、北海道から上場企業が多数輩出されたのだ。現在、上場されている北海道企業の6割から7割が、彼の手によるものと言われている。おそらく、彼が秋田県にいれば、秋田県から上場企業が輩出され、東京や大阪などの大都市圏にいたら、日本の上場企業数はもっと増えたはずだ。

自分が投資の世界にいて、様々な経営者と話をすると、全国に、高いポテンシャルをもった経営者がいることに気付く。しかし、その人たちの99.9%は、誰にも発見されないまま自身のビジネス人生を終えていく。

よく「起業家を育てる」と言われるが、起業家を世に送り出していくうえで最も難しい技術は、世界で通用する起業家を発見することにある。村口氏の才能は、起業家を発見するとともに、その起業家がいかに凄いかということを周囲に説得することに、いかんなく発揮される。「発見する力」と「世に出す力」。この2つを兼ね備えたベンチャーキャピタリストは、皆無に近い。それは、詰まるところ人間を観察し、理解する能力に集約される。

その能力はなぜ身に付いたのか。
彼は大学時代、演劇部でシェイクスピアの演出に没頭したという。そこで、人間への深い洞察力や観察眼が身に付いたのではないだろうか。

以前、彼からこんな話を聞いた。
「たとえば、人を呼ぶときの『おい』という言葉ひとつ取っても、悲しみの『おい』、喜びの『おい』、怒りを込めた『おい』というように、それこそ百通りの演出の仕方があるんだよ」

戯曲の中にある「おい」という言葉を、そのどれに当てはめればよいのかを常に考えていた経験が、人間に対する洞察力や観察眼を養う素地になったのではないかと、私は考えている。その彼が行ったベンチャー投資の最大の成功事例はDeNAだろう。起業家としては未知数だった南場智子氏の才能を見出し、立ち上がったばかりのDeNAに10億円の価値を付け、1億円の投資を実行した。もし、このときの投資がなかったら、今のDeNA、そして南場氏は出てこなかったかもしれない。
 
投資は人を発見し、フィーチャーすることで会社が大きくなり、周りの人を巻き込み新たな価値を創造する。
そこで生まれた商品・サービスが広く世の中に行き渡り、社員とその家族がご飯を食べ、子供をつくり、その子供たちが学校を卒業して社会人となり、入った会社で新しい価値を創造する。投資がきっかけとなっていろいろな連鎖が生まれ、よりよい、新しい社会のベースをつくっていく。まさに投資家冥利に尽きるといってよいだろう。

鈴木雅光 = 構成 ヤン・ブース = 写真 東海林巨樹 = イラスト

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