衛星画像からわかること・わからないこと
ロシアが保有する大砲の数は、実戦配備数、予備の保管数のどちらも圧倒的である。RUSIが2024年2月時点で推定しているところでは、ロシア軍は大砲を5000門弱実戦配備している。うち1000門弱は装軌車両に載せられた自走式、残りは旧来の牽引式となっている。
ウクライナで出した大砲の損失は予備の在庫から補充されている。ソ連時代の大砲が大半を占めるこれらの予備は広大な屋外保管施設に置かれているので、高解像度の衛星画像で確認でき、数を数えることができる。全面侵攻を始めた2022年2月時点で、ロシアには保管中の大砲が1万9000門ほどあったが、多くは数十年間にわたる露天保管中に錆びつき、使用不可能な状態だった。
OSINT(オープンソース・インテリジェンス)アナリストたちは、こうした保管施設にロシア軍の装備が何点残っていて、何点引き出されているか、また、残っているもののうちどのくらいの数が使用可能な状態にあるかを正確に評価することに取り組んできた。
なかでも最も詳細な分析を公表しているのがHighMarsedで、施設ごとに綿密に調べ、各施設に置かれている装備をすべて特定しようとしている。HighMarsedや、Covert Cabalなどほかのアナリストの分析結果は、ロシア軍の残存リソースを最も正確に示すものとして防衛サークルで広く引用されている。
ただ、慎重なHighMarsedは分析や見解には必ず但し書きを付けたり、注意点を補ったりしている。
たとえば、牽引砲の評価はとりわけ厄介だという。
HighMarsedはフォーブスの取材に「わたしが行った識別は非常に不確かなもので、どういったものを『使い物にならない』を見なすべきなのか、わたしたちもよくわかっていません」と説明した。
一例に挙げるのが、1950年代に開発されたM-46 130mmカノン砲だ。M-46は旧ソ連軍で何十年も前に退役した古い大砲だが、ここへきて突然、再び保管施設から引っ張り出されて再就役している。
HighMarsedは「おそらく、イランか北朝鮮から供与されている砲弾を使うためでしょう」と推測し、「長射程砲の数が足りていないという事情もあるのかもしれません」と続けている。
自走砲の評価もまた単純にはいかないという。
HighMarsedによると、ロシアはこれまで、2S1 122mm自走榴弾砲や2S3 152mm自走榴弾砲などについては優先的に再就役を進める対象にしていない。ロシアがこれらの自走榴弾砲を年に数百両のペースで再就役していく能力を構築しているのかどうかも不明だという。
HighMarsedは、これら以外の自走砲は大量に引き出されていて、保管施設に残されている分も部品取りに使われていると説明したうえで、「個人的には、戦争前の(自走砲の)在庫の40%くらいはまだ保管されている可能性が高いと思う」と述べている。