欧州

2024.07.20 10:00

ウクライナによるロシア軍の大砲撃破数が急増か 戦争の転換点になる可能性

ロシア軍の2S19ムスタ-S 152mm自走榴弾砲。2020年6月、ロシア・アラビノ(Karasev Viktor / Shutterstock.com)

ロシア軍の2S19ムスタ-S 152mm自走榴弾砲。2020年6月、ロシア・アラビノ(Karasev Viktor / Shutterstock.com)

ウクライナでの砲兵戦が変化している可能性がある。ウクライナ軍によるロシア軍の大砲の撃破数が大幅に増えている兆候がいくつかある。もしそのとおりであれば、戦争の転換点になるかもしれない。また、伝統的な兵器である大砲が、この戦争で新たに台頭した兵器に対して弱いということの証拠にもなるだろう。

砲兵はロシア軍の中核

砲、あるいは砲兵はロシアによる戦争のやり方で中核を担う存在である。ロシア陸軍は主として砲兵軍であって、戦車はたまたま多数保有しているにすぎない、と評する人もいるくらいだ。

「端的に言えば、ロシアは砲を縦深戦闘でも近接戦闘でも主要な殺傷手段として用いる」。英王立防衛安全保障研究所(RUSI)は昨年、ロシア軍の砲兵戦力に関する報告書のなかでそう説明している。

戦車部隊や歩兵部隊の装備や人員の質が不十分であっても、砲兵火力が十分にあれば補える。町を通りごとに占領していくには、高度に訓練され規律の高い歩兵が必要になるが、ロシア軍の場合、砲兵を使ってブロックごとに平らにしていくことができる。ロシア軍による攻撃で大半の損害を与えているのも砲兵であり、砲兵戦でロシア側が優位にある場合、ウクライナ側の反転攻勢は大きな損害を伴うことになる。

よく引用される数字をあらためて挙げておけば、この戦争でロシア軍がウクライナ軍に与えている人的損害のおよそ80%は砲兵火力によるものだ。

ウクライナ軍はこれまで、大砲の数はもちろん、砲弾の量もロシア軍に大きく劣ってきた。数量は時期や場所によっても異なるが、米欧州軍のクリストファー・カボリ司令官(陸軍大将)は4月、ロシア軍の砲弾発射数はウクライナ軍の5倍に達すると米下院軍事委員会で証言している。ウクライナ向けの砲弾供給を増やす緊急の取り組みが進められているが、それだけでは両軍の砲弾発射数の不均衡が完全に解消されるまでには至らないだろう。

だが、もしウクライナ側がロシア軍の大砲の位置を容易に探知し、撃破できるのであれば、状況は劇的に変化する可能性がある。大砲という中心的な兵器を奪われれば、ロシア軍は牙を抜かれるに等しい。

それは、もう始まっているかもしれない。
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翻訳・編集=江戸伸禎

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