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2024.07.22 13:15

「東洋のスイス」の老舗が生んだ新ベンチャー 中堅企業のモデルケースに

2020年、時計や精密機器で知られ「東洋のスイス」と呼ばれた長野県諏訪市で、地元に根ざした中堅メーカーが、新ビジネスの子会社を立ち上げた。いま、金属素材や土壌の分析、さらに高級トマトまで栽培し、異なる分野への進出で商機をつかみつつある。

「日本のファミリー企業や中堅企業で、同じようなことができる企業はものすごくあると思う」。経営者が語る新ビジネスの秘訣とは──。

事業承継総合メディア「賢者の選択 サクセッション」から紹介しよう。(転載元の記事はこちら

諏訪を支える中堅企業、子会社で新ビジネス参入

精密機器産業の一大集積地で知られた諏訪市。小松精機工作所(以下、小松精機)は1953年、時計メーカー「セイコーエプソン」の部品を手がける企業として、小松勇氏が創業。地場産業の旗手として成長してきた。

腕時計の加工技術をベースとしつつ、その技術をIT機器や自動車部品、医療機器部品などの加工に生かせるのが強みだ。特に自動車内燃機のインジェクター部品は、世界シェア約40%を占める。

 特徴的な経営スタイルで、創業者の孫・小松滋社長は営業面に強い。社長のいとこにあたる専務取締役・小松隆史さんが研究開発・技術面を担う。もう一人の親族が総務部門を担い、一人に権限や役職が集中しないスタイルになっている。

小松隆史さんは、1999年に小松精機に入社した。専務取締役を務めながら、2020年6月、金属や土壌のセンサーを開発・販売する子会社「ヘンリーモニター」を立ち上げ、代表取締役に就いた。この新しい子会社が、本記事の主役だ。


なぜ、小松精機の1部署ではなく「子会社」だったのか

ヘンリーモニターには、起業などをプロデュースするコンサル企業「フューチャーアクセス」の黒田敦史さんも自らCMOとして経営に参画している。

2人が出会ったのは2013年ごろ。東京で開かれた企業イベントで、小松精機が新開発したセンサーをプレゼンした小松さんを、黒田さんが「面白いからナンパした(笑)」という。

新開発のセンサーとはどのような物か。小松精機には、金属の結晶化をコントロールする新技術があった。しかし、その技術で生み出した素材は、検査によって品質を担保しなければ販路を広げられない。その検査に使うため、自社で磁界式センサーを開発していた。

磁界式センサーには、多数の顧客獲得につながる可能性があった。どのようにセンサーの市場を探り、販路を開拓すればいいか。模索していた矢先、小松さんと黒田さんが出会った。

本社はディフェンス、子会社は「外で暴れる」

諏訪では伝統と実績のある小松精機。その1部署として、磁界式センサーの事業展開をスタートすることもできた。しかし、小松さんと長年共同研究をしてきた中野さんと共に3人は新たな子会社立ち上げの道を選んだ。

小松精機の企業文化は「部品加工」。新商品をマネタイズする『装置販売』のノウハウはなかったのが理由の一つだ。もう一つは、フットワーク。企業の規模が大きいと、契約や決済など全てに時間がかかる。一方、子会社なら小松さん自身の判断で、意思決定と実行が可能だ。東京から遠い地方都市で、新しい繋がりを素早く作るためにも重要なメリットだった。

小松さんは「今あるところ(※小松精機)は安定しているのでディフェンスでそのまま置き、オフェンスは外で暴れてくるという手を考えた」と話し、「めちゃめちゃいろんな責任負わなきゃいけないデメリットはありますけどね」と笑う。
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