宇宙

2024.07.19 14:00

土星の衛星タイタン、液体の海に「波や潮流」が存在 カッシーニのデータが示唆

土星の衛星タイタンの北極域にあるリゲイア海に流れ込んでいる河川系を、カッシーニ探査機が撮影した画像(NASA/JPL/USGS)

土星の衛星タイタンの北極域にあるリゲイア海に流れ込んでいる河川系を、カッシーニ探査機が撮影した画像(NASA/JPL/USGS)

太陽系の中で、川や湖や海があるのは、地球だけではない。土星最大の衛星タイタンの表面にも、液体の浸食によって形作られた地形がある。ただし、この液体は水ではなく、エタンやメタンなどの液体炭化水素だ。タイタンには、地球の石油と天然ガスの埋蔵量の何百倍もの液体炭化水素がある。

学術誌Nature Communicationsに16日付で掲載された最新論文では、波や海流、河口や海峡といったタイタンの奇妙な液体域についてより多くのことが明らかになっている。

論文では、2004年から2017年まで土星を周回探査したNASAのカッシーニ探査機の観測データアーカイブを使用した。2005年年にカッシーニからタイタンに投下された着陸探査機ホイヘンスは、観測史上初となるタイタンの表面を撮影した画像を地球に送信した。そこには、地球を思い起こさせる古代の乾いた海岸線や、メタンの川が見えていた。

NASAは、2028年に無人探査機ドラゴンフライをタイタンに向けて打ち上げる準備を進めており、タイタンの液体域に関するより多くの情報が、ミッション計画チームの助けになるに違いない。

土星の衛星タイタンの赤外線画像。NASAのカッシーニ探査機による13年分の観測データを用いて作成(NASA/JPL-Caltech/Stéphane Le Mouélic, University of Nantes, Virginia Pasek, University of Arizona)

土星の衛星タイタンの赤外線画像。NASAのカッシーニ探査機による13年分の観測データを用いて作成(NASA/JPL-Caltech/Stéphane Le Mouélic, University of Nantes, Virginia Pasek, University of Arizona)

地球に似ている?

タイタンは、現在知られている最も地球に似ているとされる場所だ。大気(98%が窒素で2%がメタン)があるだけでなく、降雨や氷、湖、海、渓谷、山の尾根、メサ(卓状台地)、砂丘などもある。地形を特色づけているのは、広大な砂丘地帯、平坦な平原と、極地域にある液体炭化水素の大きな海(Mare)や湖(Lacus)だ。タイタンの表面温度は氷点下179度前後で、重力は地球の14%だ。太陽光は、地球が受ける日照量のわずか1%しか届かない。

なので、タイタンは地球に似ているとは言い難いが、水ではなく液体メタンの流れがタイタンの表面をどのように形作っているかを示す空撮画像やレーダー画像を見ると、そのように思えるのだ。

タイタンの北半球にある小規模な湖は、直径が16km以上で、深さが約90m以上もあり、大きな丘や台地の上に位置している。

海を解明

極地域にある3つの海(クラーケン海、リゲイア海、プンガ海)に向けてカッシーニから照射されたレーダーのデータを用いた今回の最新研究では、その奇妙さをさらに際立たせる詳細な特性が明らかになっている。分析の結果、それぞれの海に含まれるメタンとエタンの濃度に違いがあること、川には海に比べて多くのメタンが含まれること、より大きな波が沿岸、河口、海峡付近で見られ、潮流の存在が示唆されることがわかったのだ。

タイタンの北極域にあるクラーケン海(Kraken Mare)、リゲイア海(Ligeia Mare)、プンガ海(Punga Mare)の各表面の波の高さを色分けで示した図(Valerio Poggiali et al/Nature Communications, Licensed under CC BY 4.0 https://creativecommons.org/licenses/by/4.0/)

タイタンの北極域にあるクラーケン海(Kraken Mare)、リゲイア海(Ligeia Mare)、プンガ海(Punga Mare)の各表面の波の高さを色分けで示した図(Valerio Poggiali et al/Nature Communications, Licensed under CC BY 4.0 https://creativecommons.org/licenses/by/4.0/)

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翻訳=河原稔

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