中国のeコマースとクラウドの巨人、アリババ ADR(ティッカーシンボル:BABA)は今年、1月上旬につけた株価からわずか1%程度しか上昇しておらず、低調なパフォーマンスとなっている。これに対し、同業のアマゾンは同期間に27%の堅調な上昇を記録している。この株価低迷は、中国経済の減速や新しいeコマース企業との競争激化などが原因と考えられる。とはいえ、現在の妥当なバリュエーションと、人工知能(AI)分野での成長の可能性などを考えると、今の株価は魅力的に見える。
低迷が続く中国経済
中国の経済成長は低迷しており、不動産市場の不調などが原因で、2024年第2四半期のGDPの伸び率は4.7%と、第1四半期の5.3%から低下した。さらに、中国では個人消費の低迷も続いている。中国の小売販売はデフレのため1年半ぶりの低水準に落ち込んだが、これは企業が販売価格を引き下げながら給与も引き下げているためで、若者の失業率は5月時点で約14%と高止まりしている。
eコマース分野における競争も激化している。低価格を売りにするeコマースプラットフォームの拼多多(ピンドゥオドゥオ)やTemu(テム)を運営するPDDホールディングスは、景気低迷による消費者の低価格志向を追い風にシェアを拡大しつつある。一方で、アリババが運営するオンラインモールの淘宝網(タオバオ)と天猫(テンマオ)の売上高は、前年同期比約4%増の932億元(約2兆円)に留まった。アリババのクラウド・コンピューティング事業も成長が大幅に鈍化しており、直近四半期の売上高はわずか約3%の成長だった。これは、コロナ禍で急増したリモートワーク、オンライン教育、ビデオストリーミングなどへの需要が減速したことなどが原因だ。また、ハイエンド半導体に関する米国の対中規制も、同社のビジネスに何らかの影響を与えている可能性がある。
株価パフォーマンス
BABAは2021年1月上旬につけた235ドルから、米国時間7月17日現在の77ドル前後の水準まで、約67%の急落に見舞われた。注目すべきは、BABAは過去3年間、いずれの年においても市場全体のパフォーマンスを下回っていることだ。2021年のリターンはマイナス49%、2022年はマイナス26%、2023年はマイナス12%だった。一方、S&P500種株価指数のリターンは2021年に27%、2022年にマイナス19%、2023年に24%であり、BABAのパフォーマンスはすべての年でS&P500を下回っている。
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