欧州

2024.07.18 09:30

AIでドローン自律制御、ウクライナが米国製の最新装置を使用開始 電波妨害無効に

Drop of Light / Shutterstock.com

格闘戦や急降下爆撃にも対応か

GPS(全地球測位システム)などの衛星航法は、ロシア軍もウクライナ軍もそれぞれ敵側の激しい電波妨害に遭っている。ドローンに限らず一部の軍用システムも影響を受けていて、たとえば米国からウクライナ軍に供与されているエクスカリバー誘導砲弾やJDAM誘導爆弾も目標から外れるようになっている。ジャミングに対する一般的な解決策は慣性航法装置(INS)ということになるが、INSは高価なうえに、飛翔距離が長くなるとドリフト(軌道やジャイロの基準値などからのズレ)が発生し、命中精度が落ちるという問題もある。
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対してAIシステムでは、視覚航法を行うことができる。初期のパイロットが以前の偵察飛行で撮影した写真を用いて行っていたように、ドローンのカメラで地上の物体と照合しながら飛行ルートを見つけるという航法だ。ウクライナ軍のドローンにはすでに、AIを搭載した「イーグルアイズ」というソフトウェアを使用しているものがある。

マイヤーによれば、スカイノードSでは終末誘導も可能だ。ドローンが目標エリアに到達すると、物体認識アプリが目標を視覚的に捕捉し、ピンポイントで精密攻撃する。原理的には、数百km離れた目標に対する攻撃でも、ドローンを製油所の特定の設備に命中させたり、レーダーアンテナの中心部にぶつけたり、狙った窓を通り抜けさせたりできる。あるいは衛星画像で、前線のはるか後方の屋外保管施設に置かれていることが確認されている戦車に狙いを定めることも可能だろう。

スカイノードSは、ロシアのランセット自爆ドローンやシャヘド自爆ドローン(ロシア名・ゲラニ2)のウクライナ版にあたるドローンでも試験されている。マイヤーは、試験では目標に正確に命中させられることが証明されたと明かし、「システムは向こう数週間で前線に配備される予定」だとしている。
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スカイノードSはさらに空対空戦闘にも役立つ。マイヤーによると近々、自律的なドッグファイト(格闘戦)用のアプリも登場しそうだという。こうしたアプリを利用すれば、FPVドローンは迎撃コースをプロットし、回避を図る敵機の裏をかく機動を行い、撃破距離内に入れば、操縦士の入力なしに起爆して敵機を破壊できると見込まれる。

ウクライナ軍のFPVドローンは最近、高高度を飛行するロシア側の偵察ドローンを迎撃し始めている。スカイノードSを利用すれば、こうした交戦の数と成功率も大幅に増加するかもしれない。他方、ウクライナ側のFPVドローンがロシア側の迎撃機を確実に出し抜けるようにもなることも期待できる。

AIパイロットはこれら以外の任務もこなせる可能性がある。ウクライナ軍の熟練したドローン操縦士のなかには、ドローンが地上の目標に向かっていって爆弾を落とす急降下爆撃を行える者もいる。この攻撃方法では命中精度は自爆攻撃に近いうえ、ドローンも犠牲にせずに済むが、経験豊富な操縦士の不足が大きな制約になっているようだ。こうした急降下爆撃用のアプリもそのうちダウンロードできるようになるかもしれない。

このほか、ドローンを使った自動の地雷敷設、敵陣の後方などにある道路への鉄菱(てつびし、4本のとげが突き出た鉄球)散布、友軍への補給なども、はるかに容易になるかもしれない。
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翻訳・編集=江戸伸禎

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