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2024.07.25 16:00

電動化で推し進める、ジャガー・ランドローバーのサステナビリティ戦略

「究極のラグジュアリーSUV」をうたう、 レンジローバーPHEV。EVモードでは最大約120kmを走れる大きなバッテリーを搭載し、電気モーターと内燃エンジンによるスムースな走りを実現。路面状況を問わずつねに安定した走りと快適な乗り心地を維持する。

「究極のラグジュアリーSUV」をうたう、 レンジローバーPHEV。EVモードでは最大約120kmを走れる大きなバッテリーを搭載し、電気モーターと内燃エンジンによるスムースな走りを実現。路面状況を問わずつねに安定した走りと快適な乗り心地を維持する。

電動化に向けて進むジャガー・ランドローバー社。

激動の時代のなかでも高級志向の顧客を確実につかみながらブランドを進化させている手法を紐解く。


レンジローバーPHEVのアクセルを軽く踏み込み、クルマを発進させる。約2,970kgの巨体は音も立てずに軽やかに加速を始め、やがてエンジンのかすかな鼓動とともにスムースに速度をあげ、やがて巡航速度へと達した。

ガソリンエンジン車であれば加速のためにエンジンが大きな音を立てるシーン。人によっては、同時に起こるエンジンの振動を不快に感じるかもしれない。または多くのガソリンを消費することへのネガティブな気持ちになるかもしれない。レンジローバーPHEVの穏やかな発進は、これらの心理的なマイナスをドライバーにもパッセンジャーにも一切感じさせない。そこにはジャガー・ランドローバー社が唱えるモダンラグジュアリーな体験の神髄があった。

レンジローバー、そしてジャガー。英国を代表する高級車ブランドを擁するジャガー・ランドローバー社が好調だ。2024年5月には、2023/2024年度の売上高が過去最高を記録したことを発表。通期で290億ポンド(約5兆9,756億円)となり、純負債を7億ポンドまで削減した。

この数字の背景にはレンジローバーの世界販売台数が過去最高を達成したことや、同社の電動化やサプライチェーンのCO2排出量削減への積極的な取り組みが顧客の支持を得たことなどが挙げられる。

かつてステータスシンボルだった自動車はいまや自分の生活スタイルを表現するものへと変化。地球環境問題が深刻化する現代において、サステナブルな車社会の実現に貢献するメーカーが消費者に支持されるのは自明だ。高級車ほどその傾向は強いが、なぜ多くのライバルメーカーがあるなかジャガー・ランドローバーが売り上げを伸ばせたのか。背景にあるのはモダンな価値観へのアップデートだ。

モダンな感覚でアップデートされた、 洗練を極めたデザインもレンジロー バーの魅力。すっきりとした無駄のな さと上品な佇まい、均整の取れたプ ロポーション。堂々としていながらも、 決してこれみよがしな威圧感を与え ない姿は現代型のラグジュアリーと はなんたるかを体現している。

モダンな感覚でアップデートされた、洗練を極めたデザインもレンジローバーの魅力。すっきりとした無駄のなさと上品な佇まい、均整の取れたプロポーション。堂々としていながらも、決してこれみよがしな威圧感を与えない姿は現代型のラグジュアリーとはなんたるかを体現している。

注目すべきは、2021年にジャガー・ランドローバーが発表した「REIMAGINE」戦略だ。これは「デザインによるモダンラグジュアリー」を掲げ、サステナビリティなビジョンの実現を目指すもの。2039年までにサプライチェーン、製品、オペレーションすべてを通じて排出ガス量を実質ゼロにすることを主眼におく。そのために製品、すなわち車両を電動化する。ここまでは多くの自動車メーカーが表明する姿勢に通じるものがあるが、ジャガー・ランドローバーは、同時に車両ラインナップの刷新とリブランディングを行った。

2023年には新しいコーポレート・アイデンティティを発表。電動化を中心とした進化する先進的な姿勢と、ジャガー・ランドローバーのヘリテイジであるエレガンスを体現する。そのためのリブランディングと製品ラインアップをスリム化。「レンジローバー」「ディフェンダー」「ディスカバリー」そして「ジャガー」の4ブランドでモダンラグジュアリーを追求していくものだ。

高級SUVブランドの本質を体現するレンジローバー、自然の厳しい限界に挑むディフェンダー、家族でのアクティビティを楽しむ層に向けたディスカバリーと、ランドローバーブランドを整理。そしてジャガーは2025年にはピュアEVブランドに生まれ変わると宣言し、カッティングエッジなリブランディングを進めている。

ブランドの細分化とポジショニングの明確化により、幅広い顧客層をカバーするハウス・オブ・ブランズという手法は、トレンドや価値感の変化が激しい時代において市場の成長機会に対し柔軟な対応ができる点でも意味をもつ。

同時に、変化の激しさと先の読みにくさということは、パワートレインにも言える。ガソリンエンジンから電気モーターへの移行は、充電設備などインフラの整備が進むスピードや、バッテリー製造のための原料の供給量にも左右されることから、いち自動車メーカーの目論見通りには進みにくい。

その点でもジャガー・ランドローバーが現在のラインナップのなかでまずレンジローバーファミリーの全車両にPHEVを用意し、段階的にピュアEVを取り入れてEVモデルとしてのラグジュアリーを追求していくことは理にかなっている。

実際に、レンジローバー初の電気自動車である「レンジローバーエレクトリック」の優先予約の登録サイトを2023年12月にオープンすると2万8,700人以上が登録。レンジローバーの進化への注目の高さを表している。もちろんこの登録者全員が購入するわけではないのだろうが、2023/2024年度の「レンジローバーSV」の販売台数が4,099台であることを考えると、3万人近い登録者の数は驚くべき数字だ。

コン ソールスクリーンでバッテリーの容量や走行中のモーターとエンジンの動きをリ アルタイムで表示。

コンソールスクリーンでバッテリーの容量や走行中のモーターとエンジンの動きをリアルタイムで表示。

家庭用の充電器でもバッテリーの充電が可能。

家庭用の充電器でもバッテリーの充電が可能。

PHEVにより得られる、ラグジュアリーなドライブ体験

実際に、市街地、そして小高い山々のなかを走り抜けていくレンジローバーPHEVでのドライビング体験は、レンジローバーらしいラグジュアリーなものだった。市街地では電気モーターの特性を生かし、静かでスムースに。そして山道では瞬間的に発揮されるトルクでパワフルに。性能のよいサスペンションにより路面の凹凸による嫌な振動は極めて少ない。

ラグジュアリーSUVの先駆者としての伝統を受け継ぐ、レザーやウッドを生かしたインテリアの上質さは言うまでもなく、そして過度に装飾を施さずにエレガントを極めたエクステリアとプロポーションは、ファッションをはじめとするラグジュアリーの領域でトレンドであるクワイエット・ラグジュアリーとはなんたるかを体現しているようだ。

4種類から選べる上質なレザーとウッド、そしてメタルのコンビネーションによ る洗練を極めたインテリア。

4種類から選べる上質なレザーとウッド、そしてメタルのコンビネーションによる洗練を極めたインテリア。

SUVらしいユーティリティ性の高いラゲッジスペ ース。

SUVらしいユーティリティ性の高いラゲッジスペース。

インテリアでは環境に配慮したサステナブルなウルトラファブリックや クヴァドラも使用。ヘッドレストにはアクティブノイズキャンセレーションを装備。 不要なノイズや振動を打ち消す効果があり、車内での快適性を高める。

インテリアでは環境に配慮したサステナブルなウルトラファブリックやクヴァドラも使用。ヘッドレストにはアクティブノイズキャンセレーションを装備。不要なノイズや振動を打ち消す効果があり、車内での快適性を高める。

社会のインフラのひとつでもある自動車ビジネスは特に社会情勢や価値観の変化の影響を受けやすい。そのなかでいかに未来へと進んでいくかを、ジャガー・ランドローバーの電動化戦略は示している。

ジャガー・ランドローバー・ジャパン
https://www.jaguar.co.jp/
https://www.landrover.co.jp/range-rover/index.html


アートや食、そしていのちと接続する、持続可能な未来を見据えたPHEV体験会

2024年6月に、ジャガー・ランドローバー・ジャパンは「JLR PHEV サステナブルエクスペリエンス」を千葉県木更津市のクルックフィールズで開催。

「REIMAGINE」戦略のもとで持続可能な未来を目指し電動化を進めているジャガー・ランドローバー社では、すでにレンジローバーファミリーすべてにPHEVモデルを取り揃え、ジャガーは2025年にピュアEVブランドに生まれ変わるとして、EVならびにPHEVモデルを充実させている。

この体験会ではレンジローバー、そしてジャガーブランドの各種PHEVを試乗車両として提供。レンジローバー、レンジローバースポーツ、レンジローバーヴェラール、そしてレンジローバーイヴォーク、さらにジャガーのF-PACE、E-PACEと、BEVのI-PACEが用意された。



参加者は希望した車両での試乗だけでなく「農と食、アートと自然。いのちのてざわり。」をコンセプトとするサステナブルファーム、クルックフィールズの施設でのアクティビティを体験。

施設すべての電力を賄うソーラーパネルを目の当たりにしながら、オタマジャクシが泳ぐ池のほとりや森のなかをあるき、農園に実る作物を眺め、草間彌生や増田セバスチャンのアートに触れ、そして地中の図書館では差し込む日差しを感じながら人の叡智を知る。

電動化する自動車、そしてひとのいのちが触れ合う自然、そしてアートといったさまざまなパーツが、持続可能な未来というキーワードで結ばれる。

ただ自動車の走りを体験するだけでなく、未来の社会に思いを馳せる、深い感情が心に残る体験会となった。

text and edited by Tsuzumi Aoyama