「ゲーム機なしのXboxセット」米国で発売 MSのハード離れ加速

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マイクロソフトは最近、ゲームのサブスクリプションサービス「Xbox Game Pass」をアマゾンのストリーミングメディアプレーヤー「Fire TV Stick」に対応させたが、それに続いて今度は「XboxなしのXboxセット」とでも言えるものを米国で発売した。

それは、Xboxコントローラー(ホワイト)1個、Fire TV Stick 4Kが1個、そして新規会員向けのGame Pass Ultimateの1カ月無料利用権をセットにしたものとなる。価格は78.99ドル(約1万2500円。日本では未発売)で、Xbox Series S(300ドル。日本では約3万8000円~)やSeries X(500ドル。日本では約6万円)と比べればはるかに安い。ただし、米アマゾンでは現在、Fire TV Stick 4Kが24ドル、Xboxコントローラーが44ドルで売られており、合計金額はセット価格より安い68ドルとなる。つまり、「無料」のはずのGame Pass Ultimate利用権1カ月分がついたことで、実際には値段が10ドル高くなっているのだ。

もちろんここでの注意点は、このセットを購入した後に長くゲームを続けたい場合は、最終的なコストが80ドルにはとどまらないことだ。Xbox Game Passに含まれる全タイトルへのアクセスや、Xbox独占ゲームをリリース初日に遊ぶ権利を得るためには、月額20ドル(日本では1450円)でサブスクを継続する必要があり、1年間支払い続けた時点での合計金額はSeries Sとほぼ同じになる。最近新設された「Standard(標準)」プラン(月額15ドル。日本での価格は不明)は、クラウドゲームサービスが含まれていないためFire TVでは利用できない。

ここで生じるのは「これは誰に向けたものか?」という、おなじみの疑問だ。主要タイトルを遊ぶために年間320ドルを支払うほど熱心なゲーマーであるのに、Xboxを買わない人などいるだろうか? すでにXboxを利用している人が、Fire TV Stick経由でGame Passにアクセスして他の場所でプレイできるようにするのは魅力的かもしれないが、そうした人はもうコントローラーを持っており、Game Passにも加入しているだろうから、必要なの24ドルのFire TV Stickのみとなる。

選択肢が増えるのはすばらしいことかもしれないが、ストリーミングを通じたゲーム体験がゲーム機を上回ることは当面ありえないことや、自分でソフトを所有できず永遠に月額料金を支払わなければならないことを考えれば、いくらハードの価格が安く抑えられようとも意味がない。それに、Game Passでリリースされないサードパーティ製の人気新作ゲームは、まったくプレイできない。つまり、年間240ドルを支払っても、来年発売の『Grand Theft Auto VI』(GTA6)はプレイできないのだ。

それでもこのセットを買いたいのであれば、それはその人の自由だが、これよりも安いコストでハードを買うことができる。こうしたことを繰り返すマイクロソフトの「どこでもプレイできるXbox」戦略には疑念が募るばかりだが、これが功を奏するか様子を見たい。

forbes.com 原文

翻訳・編集=遠藤宗生

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