経営・戦略

2024.07.17 09:30

ユニクロのファーストリテイリングが「世界の消費者の心を掴む」理由

英国ロンドンのリージェントストリートにあるユニクロの旗艦店。売上収益は前期比11.0%増の3兆700億円、営業利益は24.6%増の4750億円と、日本の巨大小売企業ファーストリテイリングが世界的に著しい躍進を遂げていることは明らかだ。(Shutterstock)

「ユニクロ」や「GU」などの人気ブランドを展開するファーストリテイリングは、2024年8月期(2023年9月1日~2024年8月31日)の決算で見事な経営成績を発表し、再びその回復力と成長を示した。売上収益は前期比11.0%増にもなる3兆700億円、営業利益は24.6%増の4750億円に達する見込み(7月11日時点の通期予想)であり、この日本の巨大小売企業が世界的に著しい躍進を遂げていることは明らかだ。

世界的に顧客を獲得

ファーストリテイリングの成功の要因が、顧客が本当に欲しているものを深く理解していることにあるのはまちがいない。多くのファッションブランドが一時的な流行を追い求めている一方で、同社グループは高品質で機能的な衣料を手頃な価格で提供することに力を入れている。この顧客中心のやり方は、主力ブランドであるユニクロに顕著に表れている。ユニクロは、身体から出る水蒸気を熱に換える、薄くて暖かい「ヒートテック」や、速乾性と吸放湿に優れ、肌に触れるとひんやりと冷たく感じる「エアリズム」のような革新的な製品で知られている。これらの製品は単なる流行ではなく、顧客の現実的な問題を解決することで、ワードローブに欠かせない定番商品となったのだ。

ファーストリテイリングのファミリーの中でもう1つの期待の星であるGUは、より流行に沿った、より手頃な価格でファッションの選択肢を提供し、より若い層をターゲットにすることでユニクロを補完する。この2つのブランド戦略によって、ファーストリテイリングは幅広いファッションのニーズと好みに応えることが可能になり、信頼できるベーシックな服と最新の流行を取り入れた服のどちらでも、顧客のニーズに合った製品を提供できるようになっている。

日本文化に対する世界的な関心の高まり

このような成功に加えて、ファーストリテイリングの追い風となっているのが、日本文化に対する世界的な関心の高まりだ。世界的にますます多くの消費者が、日本のライフスタイル、ファッション、デザインの傾向を受け入れつつあることから、ユニクロやGUのようなブランドは多大な恩恵を受けている。日本文化において重視されるシンプルさ、品質、機能性は、すべてファーストリテイリングのコアバリュー(本質的価値観)と完璧に合致する。その統合は、日本製品と同義であるミニマリストの美学や入念なクラフトマンシップをますます求めるようになった世界中の消費者が、ブランドにより深く共感するのを後押しする。
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翻訳=日下部博一

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