1人目が80年代のデザイン界に大きな渦をまき起こしたミラノを拠点にした国際的グループ、メンフィスを主宰したエットレ・ソットサス(1917-2007)。機能を優先しないカラフルな作品を世に出した彼は「ポストモダンの旗手」と評されました。
しかし、彼は「そう呼ばれるのは心外」と語りました。彼が言わんとするのは、そもそもモダニズムはいったい定義されているのか? というところでしょう。
アンチ・モダニズムを強調したくてやっているわけではない、という本音もあったと思います。大量生産時代に相応しいデザインを提案した、20世紀初頭に生まれたドイツのバウハウスの流れをモダニズムの雛形としやすい。しかし、ポストモダニズムの先端を走っていると言われれば言われるほど、「あれが唯一のモダニズムではない」という想いが彼の内で強くなっていったのでは、と想像します。
2人目がガエ・アウレンティ(1927-2012)。パリのオルセー美術館の設計がよく参照されます。現在、ミラノにあるトリエンナーレ美術館で彼女の回顧展が開催されており、これまで2度、足を運びました。
1950年代後半からスタートした彼女の活動は、個人邸のインテリアから劇場の舞台美術に至るまできわめて広範囲に及びました。初期からのさまざまな作品を見ていると、いわゆる伝統的な様式に沿わないモダンでありながら、よく目にするモダンではない。モダンとは実に幅の広いものだと気づきます。
こうして、ソットサスの言っていたことの裏がとれた気になりました。デザイナーでありデザイン研究者でもあったアンドレア・ブランジ(1938-2023)は自著のなかで、「ガエ・アウレンティはヨーロッパ合理主義の国際スタイルがもつ冷たい眺望とは一線を画している」と評しています。