NASA(米航空宇宙局)によると、宇宙飛行士は国際宇宙ステーション(ISS)の中で尿処理装置(Urine Processor Assembly)を使用し真空蒸留によって尿から水を回収している。それほど水は貴重な資源であり、宇宙用生命維持システムは乗組員が持ち込んだ水の98%近くを回収することを目標にしている。
生命の維持
しかし、宇宙船の外では違う。船外活動は数時間におよぶこともあり、宇宙飛行士は「最大吸収性衣類(MAG)」を着用する。1970年代から使用されているMAGは、多層の高吸収性樹脂を使用している。簡単にいえば紙おむつであり、そこで吸収されたものは一切リサイクルされない。そこで、映画『デューン』から着想を得たフルボディの「スティルスーツ」の登場だ。映画に出てきた宇宙服は、発汗、排尿によって失われた水分を吸収し、浄化して飲用にしていた。
水のリサイクル
Frontiers in Space Technologiesに掲載されたコーネル大学の研究チームによる論文は、独自の尿回収・ろ過システムを使用する現実での「スティルスーツ」のプロトタイプを紹介している。「MAGは漏れによって尿路感染症や胃腸障害などの健康問題を引き起こしたことが報告されています」とワイル・コーネル医科大学およびコーネル大学の研究スタッフで、論文の第一著者であるソフィア・エトリンはいう。「さらに現在、宇宙飛行士は宇宙服内の給水バッグにわずか1リットルの水しか持たされていません」
1リットルの水は、数時間にわたる船外活動のために十分な量ではない。NASAが計画しているアルテミス計画におけるより長時間の月面歩行のことを考えればなおさらだ。宇宙飛行士は、緊急時のために24時間の宇宙遊泳が可能であるべきだとエトリンはいう。少なくとも4つのアルテミス計画で、複数の宇宙飛行士による月面歩行が計画されている。
尿を回収する
「スティルスーツ」には、極細繊維ポリエステルで覆われた尿回収装置が組み込まれている。装置は、複数の層の伸縮性素材からなる下着とそれにつながったシリコン成形による回収カップからなっている。男性と女性の宇宙飛行士は異なる形状とサイズのものを使用する。吸収性ヒドロゲルとつながっているRFIDタグ経由で湿気が検知されるとポンプが作動する。微小重力用に設計されており、500mlの尿の回収にかかる時間はわずか5分で、研究チームによると効率は86%だという。「浸透・逆浸透圧装置に接続された真空ベースの体外カテーテルと複数の安全機構を通じて飲用水を継続的に供給することで、宇宙飛行士の健康と快適な生活を守ります」とエトリンはいう。これとは別にノンカフェインの高エネルギー飲料を宇宙飛行士に供給する計画もあるという。
(forbes.com 原文)