「製缶メーカー」の技術とは?
「生ジョッキ缶」発売時の中身はもちろん、世紀の大ヒット商品である「アサヒスーパードライ」だ。
「でも、われわれは中身は作れても容器は作れない。まさに、サプライヤーさんとの共創が必要です。『こういうことをしたい』を容器包材メーカー、製缶メーカーさんにプレゼンし、興味を持ってもらえれば、協業、共創への取り組みが始まります」と大學氏。
田村氏は言う。「私の1つ前の所属は『生産技術センター』でしたが、既存と大きく形状の異なる『フルオープン缶蓋』と、ビールを充填すると『自然発泡する缶胴』という全く新しい2つの資材を、ビール工場で安定的にハンドリングできる技術を獲得すること──。生ジョッキ缶の生産適性を持った生産設備を当社のビール工場に実装することがミッションでした。
ビールメーカーは、複数の製缶メーカーと組むことが通常だという。「得意不得意が各社違いますし、規模も違います。プロジェクトによっては親和したり、合わなかったりする。また、自社で研究施設を持っているとか持っていないとか。さまざまな条件の違いや個性によって、製品によって組ませてもらっています」と田村氏。
たとえば生ジョッキ缶では、当初は取り引きの歴史が長く、小回りが効く「昭和アルミニウム缶(現・アルテミラ)」と組んだという。
余談だが、製缶メーカーの名前は、製品の缶には記されていない。代わりに、よくよく缶を見ると、各社の「目印」(マーク)が小さく印刷されている(下のマークでは、左からユニバーサル製缶<現・アルテミラ製缶>、大和製罐、東洋製罐、昭和アルミニウム缶<現・アルテミラ>、武内プレス工業)。
オーブンで「焼きつけ」るときに塗料が──
塗料メーカーであるトーヨーケムが「失敗」塗料を泡立ち技術としての「強み」に変換し、「生ジョッキの泡立ちを缶ビールで実現したい」という顧客ニーズに合致させたことは、上述の通りだ。紹介を受けたアサヒビール側も「『規格外』の吹きこぼれではなく、泡立ちの『面白さ』に発想を逆転した」(大學氏)からこそ、成立したヒットだった。