この実験場「カプースチン・ヤール」は、多くの点でソ連の宇宙開発発祥の地と言える。V2ロケットの試験は国産ロケットの開発に弾みをつけ、開発されたロケットは世界初の人工衛星をはじめ、ソ連の初期の人工衛星を軌道に乗せることになった。
米中央情報局(CIA)の1990年代の評価によれば敷地面積およそ7800平方kmとされる広大なカプースチン・ヤールで、鹵獲品のV2ロケットの最初の発射実験が行われてから77年後、この実験場は、ロシアがウクライナに対して起こした戦争でウクライナ側の攻撃目標にされている。
9日かそれより前、ウクライナのドローン(無人機)少なくとも1機がカプースチン・ヤールの組み立て施設に突っ込み、炎上させたもようだ。ロシアの宇宙開発史に詳しいジャーナリストのアナトリー・ザクは「カプースチン・ヤールの歴史的な実験場は、スターリンのロケット発射員がナチの弾道ミサイルの飛ばし方を学んでいた場所だが、どうもウクライナのドローンによって『非ナチ化』されたらしい」と皮肉交じりにコメントしている。
On July 9, Ukrainian drone strikes targeted the famous Russian 4th State Central Interspecific Test Site "Kapustin Yar", located near Znamensk in Astrakhan Oblast, southern Russia.
— Status-6 (Military & Conflict News) (@Archer83Able) July 9, 2024
A Ukrainian drone impacted a building located on the territory of the "105th site", belonging to… pic.twitter.com/aky5xSyaUU
一方、カプースチン・ヤールに対する攻撃でウクライナが何を達成しようとしているのかはもっと不明だ。ロシアは近年、カプースチン・ヤールで最新鋭のS-500を含む地対空ミサイルシステムなどの試験を行っている。「ここはロシア国防省の運用試験場のひとつだ」とザクが強調しているとおりだ。ちなみに、まだ1基しかないとみられるS-500はクリミアに配備され、最近ウクライナ側の攻撃を受けた可能性も出ている。