2024.07.14 09:00

日本人がなりやすいパリ症候群、「あこがれ」が「がっかり」に変わると体調を崩す

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何年も前から行きたかった場所をやっと訪れてみたら、期待したほどのこともなかったという感覚には、誰しも思い当たる節があるだろう。それなら、こうした感覚に苛まれる症状に、世界随一の観光人気を誇る国の中でも飛びぬけて多くの観光客が集まる街の名がついているのは、理にかなっている。「パリ症候群(パリ・シンドローム)」である。

パリ症候群とは何か、原因は?

パリ症候群は、心理学ではよく知られた現実の症状だ。重度のカルチャーショックにより、幻覚、頻脈、めまい、吐き気などの症状が引き起こされる状態をいう。精神科医の太田博昭が1980年代に定義した。

シャンゼリゼ通りやオスマンのパリ大改造で生まれた大交差路に心躍らせて花の都に降り立ったと想像してみてほしい。しかし、やがて市内のすべての通りが美しい街並みを誇るわけではなく、夢見たパリはロマンチックな空想の産物にすぎなかったと気づく。

言葉の壁を乗り越えるのが難しいときもあれば、文化の違いがあまりにも顕著で、見ないふりをうまくできない場合もある。こうした経験をしたときの「がっかり感」は、ホームシックや旅の疲れによっても増す。

毎年十数人の日本人が発症する

2011年、米誌アトランティックはその年の夏に少なくとも20人がパリ症候群を発症したと報じた。その多くは日本人で、初めてパリを訪れ、思っていたような街ではなかったことに気づいたという。

パリ症候群の報告は日本人観光客の間で特に多い。おそらく、パリへの過剰なあこがれが原因ではないかとみられている。

ロイター通信は2007年、「愛想のない地元の人々やみすぼらしい通りといった現実が期待と衝突」した結果、毎年十数人の日本人観光客が精神的な支援を求めていると伝えた。その年、在パリ日本大使館は、ホテルの部屋が盗聴されていると信じ込んだ観光客ら4人を日本に送還したという。

もちろん、日本人に限らず、誰もがパリ症候群になる可能性があり、その原因は、思い描いた理想の街の姿が現実とそぐわないという失望感にある。

米オンライン掲示板Redditには、「あなたが体験したパリ症候群の瞬間は?」というスレッドがあり、喫煙に関する文化の差異からゴミ出し方法の違いまで、さまざまな体験が書き込まれている。「逆パリ症候群」の経験談もある──パリについて否定的なコメントをたくさん聞いていたのに、実際に訪れてみたらとても楽しく快適だったというものだ。
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翻訳・編集=荻原藤緒

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