私たちが求めるのは「優しい破滅」? 行方不明展を解剖する。【大森時生×梨×オダウエダ植田】

(左から)大森時生、植田紫帆(オダウエダ)、梨

「行方不明」という言葉は、様々な場面で使われる。本来は人や動物に対して使われる言葉だが、日常会話では「テレビのリモコンが“行方不明”になった」のように、モノに対しても使われている。

そんな、「失踪」でも「失跡」でも代替できない不思議な「行方不明」について、理解を深めるための展覧会「行方不明展」が7月19日にスタートする。プロデュースするのは、新進気鋭のホラー作家・梨とテレビ東京で「不気味」なモキュメンタリー番組などを手がけるプロデューサーの大森時生、そしてホラーカンパニー「株式会社闇」だ。

制作チームには、フェイクドキュメンタリー『Q』の寺内康太郎監督、第2回日本ホラー映画大賞を受賞した近藤亮太監督、アートディレクターの大島依提亜も参加している。

本展覧会は、2023年3月に梨と株式会社闇が手掛けた展覧会「その怪文書を読みましたか」の大ヒットを受けて企画。同会はチケットが連日即完売し、体験まで6時間以上の待ち時間が発生してSNSでも話題になった。その後、全国5都市での巡回展や書籍化などにもつながった。

豪華な制作陣と前回の実績を踏まえて大きな期待がかかる「行方不明展」だが、事前にはあまり情報が公開されていない。いったいどんな展覧会なのか──。プロデュースした梨と大森に、2人の作品のファンでもある芸人の植田紫帆(オダウエダ)を迎えて、話を聞いた。

※この展示はフィクションです

「ここではないどこかへ」行きたい人がいる

──大森さんの『イシナガキクエを探しています』(テレビ東京)やフェイクドキュメンタリーQなど、最近特に「行方不明」を題材にしたコンテンツが増えているように感じます。「行方不明展」はどのように企画されたのですか?

梨:「行方不明展」は、昨年私が実施した「その怪文書を読みましたか」という怪文書展の制作メンバーの中に大森さんを加えて実現した企画です。

ですので、まずは「怪文書展の次は何をやろうか」と考えて、フィクションとしての「行方不明」をテーマにしたらどうだろう、っていう話になっていたんです。けれどその時期に大森さんがモキュメンタリー『イシナガキクエを探しています』を発表されて。偶然どちらも「行方不明」がキーワードになっていました。
 

「行方不明展」のメインビジュアル

植田:たまたま偶然が重なったということは……そこにはとんでもないドラマが隠れているようにも思わせられてしまいますね。
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文=田中友梨 撮影=山田大輔

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